日刊スポーツ新聞社が運営する、スポーツや部活を頑張る小中高アスリートや保護者、指導者のためのスポーツ栄養・食育サイト「アスレシピ」は19日、明大ラグビー部とのコラボセミナー「体を大きくするための食事の取り方~明治大学ラグビー部の食事に学ぶ~」を東京・駿河台キャンパスで開催した。

アスレシピ主催イベントで過去最多となる171人の申し込みがあり、従来の保護者だけでなく栄養指導者や現役選手が多く参加。本年度こそ準優勝に終わったものの、全国大学ラグビー選手権で3年連続決勝進出(昨年度は日本一)の強豪校の「食の秘密」を学んだ。

セミナーは2部構成で行われ、第2部はトップ選手によるトークショーが実現した。当日発表だった現役プレーヤーが登壇し、明らかになると大きな拍手。主将のフッカー武井日向(4年=国学院栃木)、寮長として私生活を改善したCTB射場大輔(4年=常翔学園)、副将のWTB山村知也(4年=報徳学園)、来季を担うロック片倉康瑛(3年=明大中野)の4選手と、藤野健太ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチが、第1部で講演した管理栄養士の山田優香さんと並んだ。

まずは武井主将が、悔しくも2連覇を逃した11日の大学選手権決勝(対早大、35-45)に触れ「結果として準優勝に終わってしまいましたが、この4年間は最高の経験ができた。明治に入って良かった」と、さわやかにあいさつ。その後の14日に、関東大学ラグビー(対抗戦・リーグ戦)のマン・オブ・ザ・イヤーに対抗戦全勝に導いたことが評価され、選出されたことを紹介されると再び大きな拍手が送られた。

脅威の走力が武器のフッカー武井(97キロ)は、明大が定めるラグビーのパフォーマンス・筋力・体組成結果を基にしたグループ分けで「筋力フォーカス」(質向上)に属していると切り出し「筋力が不足していたので自主的にウエート(トレーニング)をしたり、オフの日もしっかり食事を取るよう心掛けた。オフにどうしても揚げ物を食べたくなったら昼に食べ、夜は魚にしていた」とストイックな4年間を回想した。

「シェイプアップ」グループのCTB射場(88キロ)は「オフになると、地元で暴飲暴食して体重が増える。山田さんに怒られてました」と笑わせ「まず野菜を山盛りで食べ、さらにプロテインで胃を膨らませてから食事するようアドバイスを受けて3週間で2、3キロ落ちました」と感謝した。

一方でベンチプレス170キロを上げる身体能力を持つ射場。FW陣の最高値でも175キロという中、BK陣ではダントツの1位で「CTBは外国人が多くて自分より10~20キロは重い。対抗するために筋力はつけておこうと。ベンチプレスで相手を止められるわけじゃないけど、少しは関係しているのかな。入学時は120キロで、4年間で50キロ上がった、短期間では無理。継続の成果」と自負を込めた。

WTB山村(77キロ)とロック片倉(101キロ)は「増量必須」グループだった。山村が「一気に量を食べられないので3食+2食の補食で目標数値プラス2キロを達成できた。オフは気が緩むけど、継続できれば増える。自分の気持ち次第」と振り返り、片倉がさらに沸かせた。「白ご飯を朝300グラム、昼500グラム、16時飯(よじめし=練習前の補食)500グラム、夜700グラム、夜食300グラム食べてました」と打ち明けると、どよめき。「700グラムを1時間半かけて食べてました」と照れ笑いも、今の学生会屈指のサイズを手に入れた。

その片倉に対し、山田さんが「もう、お互い意地。毎週毎週、面倒くさかったですよ。麺類を食べた日じゃない日のチェック表に、麺類を食べたとか書いてあって、あ、まとめて書いたな~とか」と笑わせつつ「でも徐々に強くなりたい気持ち、覚悟を持ってやってくれるようになった」と評価。実際、高校時代に3年間で20キロ増やした体重が、大学入学後の1年間だけで12キロも増えたという。片倉も「マンツーマンで半年間、指導してくださったので」と目を細めて頭を下げるしかなかった。

この後、ジュニア世代の鍛え方にも話題が広がり、藤野S&Cコーチがマイクを握った。何歳から筋力トレーーニングをしていいか? との司会者からの質問に「生まれたら、すぐ始めてください。この世に生を受けた瞬間から始まっている。(ハンマー投げの)室伏広治選手は生後3カ月で懸垂していた」と話しだすと、場内は大爆笑。「それは冗談として、まじめに話します」と切り替えて「小さいうちに筋トレすると身長が伸びなくなると言われてますよね。実は、そんなことありません。都市伝説みたいなものです。成長ホルモンを活性化するので、いいと考えられています」と説明。その上で「ただ、自重にしてください。バーベルなどの器具は、適切な指導と補助がないとベンチプレスなど危ない。鉄棒と地面があればできる、懸垂や腕立て伏せなどはいいと思います」と勧めた。

最後は、受講者をバックに「アスレシピポーズ」で記念撮影。武井、射場、山村の4年生は卒業後、国内最高峰のトップリーグでプレーすることが内定している。23年ワールドカップ(W杯)フランス大会への出場も期待される3人は「将来は日本代表になりたい」と声をそろえ、来季が最終学年の片倉は「今年は準優勝でしたけど、武井さんたちの代が残してくれた私生活を正すという文化を受け継ぎ、さらにレベルアップして次こそ優勝したい」と1年後への抱負を語った。終了後は参加者との記念撮影や握手にも応じ、刺激的な1日となった様子だった。【木下淳】