12年ロンドン、16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)柔道男子66キロ級銅メダルで、73キロ級の海老沼匡(31=パーク24)が15日、都内のパーク24本社で記者会見を行い、現役引退を発表した。

紺色のスーツ姿で出席した海老沼は「柔道選手としての引退を決めました。昨年の講道館杯決勝で負けて、国際大会で活躍することが厳しいと思いました。五輪で金メダルが取れなかったことだけは反省点ですが、自分自身では全力を尽くして柔道と向き合ってきました。全体を通じて悔いはありません」と説明し、現役生活に終止符を打った。

栃木県出身。兄2人の影響で5歳から柔道を始めた。先月24日に53歳で死去した92年バルセロナ五輪男子71キロ級金メダルの古賀稔彦さんに憧れ、中学から上京し、柔道私塾「講道学舎」に入門した。巧みな組み手技術と背負い投げを武器に、五輪2大会連続銅メダル、世界選手権3連覇を達成した。

17年8月には10キロ以上の過酷な減量苦から、73キロ級に階級変更。講道学舎の後輩で東京五輪代表の大野将平(旭化成)や、同僚の17年世界王者橋本壮市らとしのぎを削ったが、準優勝が多くなかなか勝ちきれなかった。

今月4月の全日本選抜体重別選手権は「勝っても負けても最後」という強い気持ちで臨んだ。66キロ級に続いて2階級制覇を達成し、有終の美を飾った。大会後の全日本柔道連盟の強化委員会で、過去2年間の実績により24年パリ五輪につながる6月の世界選手権(ブダペスト)代表は落選した。

これまで選手と所属コーチを兼任していたが、今後はコーチに専念する。海外での勉強も視野に入れ、「指導者としては0からのスタートになります。スポンジのようにいろいろなことを吸収して自分に合った指導方法を見つけ、選手にあと一押しできる指導者になりたいです」と青写真を描いた。

約1時間の会見では涙を流さず、完全燃焼したかのように時折笑みを浮かべながらすがすがしい表情で質疑応答に応じていた。