男児略取、殺害で元運転手に無罪判決
愛知県豊川市で02年、会社員村瀬純さん(28)の長男翔ちゃん(当時1歳10カ月)を車で連れ去り殺害したとして、殺人と未成年者略取の罪に問われた元運転手河瀬雅樹被告(38)の判決公判で、名古屋地裁の伊藤新一郎裁判長は24日、「自白に看過しがたい疑念がある。犯罪の証明がない」として懲役18年の求刑に対し、無罪を言い渡した。河瀬被告は判決後、釈放された。
目撃者や物的証拠がなく、捜査段階の自白の妥当性が争点となった。検察側は控訴を検討する。
判決理由で伊藤裁判長は「自白に犯人しか知り得ない秘密の暴露がなく、動機はあまりに短絡的で不自然」と述べた。
伊藤裁判長は、河瀬被告が愛知県警の任意同行後に犯行を認めた、などとして、捜査の任意性を認め「犯人の可能性は否定できない」とした。
その上で自白内容を詳細に検討。被告の車から翔ちゃんの毛髪など痕跡がなく、海に落とした方法も「背中を押した」から「投げ落とした」と変わったと述べた。
さらに(1)略取現場で翔ちゃんを目撃した人はいるが、河瀬被告がいたと断定できない(2)泣き声が気になるなら、駐車場所を変えれば済む(3)犯行後に略取現場に戻ったのは不自然−とも指摘。
「客観的状況は捜査機関がすでに把握し、犯人でなくとも想像で供述できる。捜査官の誘導を否定できず、証拠関係を前提にする限り、犯罪の証明がない」とした。
河瀬被告は、02年7月28日午前1時10分ごろ、豊川市のゲームセンターの駐車場で、村瀬さんのワゴン車に1人でいた翔ちゃんを開いていた窓から連れ出し、同県御津町の岸壁から海に投げ落として水死させたとして起訴された。
駐車場で寝泊まりしていた被告が不審者として浮上、03年4月、逮捕された。
[2006/1/24/16:49]
写真=男児略取、殺害事件で無罪判決後、記者会見する河瀬雅樹被告(共同)
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