「メガネ先輩」だけじゃないぞ。カーリングを見ていて、いつも感じていた。

18年平昌五輪、韓国の「メガネ先輩」こと金ウンジョンが話題となったが、メガネをかけた選手は他にもいた。それも数多く。ただ、そのキャラクターの濃さと、日本代表ロコ・ソラーレとの準決勝の印象が強すぎた。

それから4年ほど。だから、昨年12月の北京五輪最終予選は衝撃だった。「やっぱり、メガネだらけだぞ…」。参加9カ国の「メガネ率」を数えてみた。レギュラー36人中、なんと12人も。3分の1! もう「先輩」だけの専売特許ではない。きっと何か理由があるのだ。

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これ以上ない回答者に会えたのは1月だった。日本女子の「トップ4」、18年には世界選手権出場経験もある小穴桃里(26)こそ、日本で最も有名な「メガネ」なカーリング選手だ。

「ついに、聞いてくれましたか。ちゃんと訳がありますよ」。笑顔で待ち構えてくれた。

「カーリング場はすごく乾くんです。最初はコンタクトをつけてやっていたんですけど、ドライアイでつけられずに…。石を投げるときにターゲットに向かって、目を開けていたいんですけど、ちょうど一番大事な、放すタイミングで目を閉じたくなっちゃうんですよ。乾いてきて。それで困るので」

氷=水=渇きとは無縁では? 「違うんです。実はカーリング場は除湿機を回してるんです!」。深いわけがあった。石を氷に滑らす競技。高い湿度は大敵だった。「湿度が高いと霜が降りてしまって、アイスコンディションがよくなくなってしまう。すると、石の曲がりなどが不規則になってしまい、ゲームにならないんです」。

目からうろこ。吸気を出す観客の入り具合なども影響するという。霜が降りれば、投げた石を調整するために掃くブラシの先端も水っぽくなり、重たくなって使いにくくなる。適度な乾燥こそ、ナイスゲームの命だった。

なお小穴の裸眼は0・1ほど。試合中のメガネは日常使いと同じだ。ポジションは司令塔のスキップで「基本ブラシをはかないので、(氷上に)落ちることもないんです」。ただ、これも印象だが、細いフレームではなく、小穴のように丸眼鏡の選手しかいないのも気になっていた。「それはですね、石を投げるときにのぞき込むようにすると、フレームが邪魔なんです」。漫画「アラレちゃん」のような丸フレームが、カーリング女子に続出する訳はそこか。

スポーツ用でないメガネでプレーできるスポーツはまれで、なんと小穴には3年前からメガネメーカー「999・9(フォーナインズ)」がスポンサーについた。それでもコンタクトをする選手もいる。「乾くみたいで、みんな目薬をしてますよ」。え、そんな場面を意識したことなかった…。これからは「もぐもぐタイム」だけでなく、「目薬タイム」にも注目か?【阿部健吾】