団体戦銅メダル獲得に貢献した全日本女王の坂本花織(21=シスメックス)が3位発進した。重圧の懸かる最終滑走で、自己ベストとなる79・84点を記録した。

冒頭の2回転半を鮮やかに着氷すると、続く3回転ルッツ、フリップとトーループの連続3回転ジャンプと、すべてのジャンプを決めた。演技後は涙を流し、得点を知るとまた感激して泣いた。

4年間で置かれた立場は変わった。ロシア・オリンピック委員会(ROC)のワリエワ、シェルバコワ、トルソワらメダル候補と名を連ねた最終グループ。その大トリを担った。リンクサイドには4歳の頃から指導を受け続けてきた、中野園子コーチがいた。

【フィギュア】女子SPライブ速報

「代表発表でたくさんの人が集まっていて、自分の名前が呼ばれなくていいの?」

21年12月、北京五輪切符3枚を懸けた全日本選手権前にそう声をかけられた。

「本当にそういう状況は絶対に嫌だなと思って、頑張れました。中野先生は自分より自分のことを分かっている。試合でダメな時のパターンも把握している。先生がいなかったら、ここまでこられていなかった」

4年前は違った。SP5位で入った、フリーの最終組。そこにはロシア勢で金メダルをつかむザギトワと銀メダルのメドベージェワ、銅メダルのオズモンド(カナダ)がいた。6位入賞を飾ったフリーの演技後、中野コーチは振り返った。

「別に『勝負せずにいつも通りで。戦える相手じゃないからね』って言ってありました。最終グループの人たちはみんなうまいので『戦おう』と思っていっちゃうとダメなので『自分なりに一生懸命滑ればいいよ』っていう感じでした。いつも通りでした」

二人三脚で歩み、その成長をかみしめながら五輪に戻ってきた。SPでの最終滑走が決まった2日前、坂本は自分に言い聞かせた。

「最終滑走の時は大体いつもいいので、そのイメージのままでいこうと思っています」

フリーは17日。大切な4分間に全てを込める。【松本航】