北京五輪スピードスケート女子1000メートルで10位だった小平奈緒(35=相沢病院)の勇姿は、地元長野県で心臓の難病「拘束型心筋症」と闘う中沢維斗(ゆうと)くん(10)にも力を与えた。昨年11月、渡米による心臓移植のために「ゆうちゃんを救う会」が実施してきたクラウドファンディングに小平も支援。自身のツイッターで「少しでも力になれたらと思い、応援の想いとともに寄付させていただきました。唯一無二のゆうちゃん心臓が、強く強く未来に続きますように!」とメッセージも添えた。

昨年11月16日に始まった活動は、今月9日に目標金額の2億3700万円を達成した。両親が17日、感謝の意を伝えるために長野市内で会見。父智春さん(42)は「平昌五輪金メダリストの小平選手が募金とSNSでの拡散を行っていただいたことは、多大な影響を与えていただけました」。昨年末に一時は体調が悪化し、集中治療室に入ることもあった維斗くんも、現在は大好きな「鬼滅の刃」などのアニメやバラエティー番組をベッドの上で楽しむ元気を取り戻し、支援の力を感じているのかもしれない。

父は「息子が(手術を終えて)帰国して、テレビで小平選手を見た時に『この選手も支援してくれたんだよ』と話したい。他の競技の方やチームにも多大なるご協力をいただきましたし、スポーツを通じた力はすごいなと感じた。温かい」と涙があふれた。母加代さん(45)も「500メートル(17位)の時は『うわあ~泣かないで』と思って見ていた。長野県人として、いつも勇気づけられています」。小平から力を得て、来月上旬までには米テキサス州の病院に移動し、ドナーを待つ。【鎌田直秀】