ノルディックスキー複合男子個人ノーマルヒル2大会連続銀メダリストの渡部暁斗(33=北野建設)が7位だった。前半飛躍(ヒルサイズ=106メートル)は98メートルで9位。後半距離(10キロ)を首位と1分16秒差でスタートして追い上げるも、順位を2つ上げるにとどまり、3大会連続のメダルを逃した。弟の善斗(ともに北野建設)は13位、山本涼太(長野日野自動車)は14位、谷地宙(早大)は30位。

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ゴールした渡部暁は両膝に手を置き、荒れた息を整えた。優勝したガイガー(ドイツ)を見つけるとハイタッチでたたえた。自身より10秒遅れでスタートし、中間の5キロ地点まで後方で滑っていた相手が頂点に立った。逆転を狙って必死に前を追ったが、追いつけなかった。7位でフィニッシュ。メダルまで25秒8差。2大会連続で銀メダルを獲得している種目で、健闘したが表彰台に届かなかった。「メダルを取れなければ何位でも変わらない。今日はメダルを取れてもおかしくない展開だった。そこを逃している悔しさが残る」と残念がった。

奇跡を信じたが、起きなかった。前日8日の公式練習。5大会目の五輪初戦を前にベテランが緊張していた。今季不調の飛躍が鍵だった。「奇跡を信じるって言葉を僕は使いたくなかったけど、ここに来てそういうのを願ってみるっていうのもアリなのかな」。神様に願うほど、調子は上がりきっていなかった。だが信じた。「そういうのが起こり得るのがオリンピックだと思うので」。飛躍でK点(95メートル)を上回るも、逆転をかけた後半のタイム差は広すぎた。

上位勢が新型コロナウイルスの影響で不在の試合だった。今季W杯8勝の金メダル候補、リーベル(ノルウェー)や3連覇を狙ったフレンツェル(ドイツ)ら今季のトップ7のうち4選手が陽性判定により欠場した。ただ、ライバルたちより調子が上がらない自身との闘いだった。

試合は続く。15日ラージヒル、17日団体での悲願の金メダル達成を誓う。今大会は集大成。「有言実行、金メダルを取れるように頑張りたい」。闘志を燃やし、表情は明るかった。【保坂果那】