15日のノルディックスキー複合男子ラージヒルで渡部暁斗(33=北野建設)が銅メダルを獲得した。14年ソチ、18年平昌五輪ノーマルヒルで銀メダルに輝いており、同競技で日本人初の3大会連続の表彰台に立った。首位と0・6秒差の大接戦だった。94年リレハンメル五輪団体金メダリストの阿部雅司氏(56)が渡部暁の銅メダル獲得の理由を解説した。

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今まで複合に興味なかった人もあんなにドキドキする競技なんだとおもしろさを知ってもらえたのではないか。トップ3が1秒以内なんて五輪でなかなかない。暁斗は日本のみなさんに複合の醍醐味(だいごみ)を知ってもらいたいと長年言っていた。それが出来た試合じゃないかな。

今季は前半のジャンプで上位に行けずW杯で苦戦していた。ノーマルヒル(9日)の後、トレーナーからのアドバイスで使えていない筋肉を助走と飛び出しで意識することですごくいいジャンプになった。ラージヒル本番で上位につけられたのが大きかった。

後半距離のタイム差は54秒だったが、前半首位のリーベル(ノルウェー)は新型コロナウイルスによる隔離明けで標高1600メートルのコースを初めて滑った。相当つらそうだった。コースを間違えるなんてなかなかないが、酸欠状態で判断能力が落ちたせいでは。

暁斗の集団にいたファイスト(ドイツ)やイルベス(エストニア)もノーマルヒルを同じく欠場している。体力的にきつくて先頭に出ることができなかったのかもしれないが、2人は暁斗より走力が落ちる。もし暁斗が彼らの後ろについていたら、ペースが落ちて後方のドイツ勢に追いつかれていた。

暁斗は金メダルを取りにいくレースをした。最終的には銅メダルだったけど、金メダルを狙って攻めたから取れた。守りに入っていたら取れなかっただろう。(94年リレハンメル五輪複合団体金メダリスト)

◆渡部暁斗のラージヒル 前半135メートルを飛び5位。後半距離を首位と54秒差でスタートした。首位リーベルが途中でコースを間違えるアクシデントがあり、差が縮まった。渡部暁は3・5キロ地点をトップで通過し、先頭をキープ。ラスト会場に入った時に12番スタートだったグローバクと10番スタートだったオフテブロ(すべてノルウェー)に追いつかれ、ゴール手前のコーナーで逆転されるデッドヒート。最終的にグローバクが金、オフテブロが銀、渡部暁が銅メダル。金メダルとはわずか0・6秒差だった。