最後の走者に山本涼太を持って来た作戦がドンピシャだった。普通は4走にエースを置く。メダルを取りに行くとなったら、4カ国から脱落して10~20秒離れたらメダルはなくなる。日本は暁斗を3走に持って来て、オーストリアほかの揺さぶりにしっかり対応できたし、涼太の若さ、パワーにかけた。

涼太だったから、後ろで我慢して、前の選手から何度も前に行けと言われても行かなかった。落ち着いていた。クレバーさがあった。暁斗ならまじめに前に行ってしまうタイプ。そうすると力尽きて負けてしまう可能性もあった。

最後の2・5キロに入った時にオーストリアは涼太を振り落とそうとして登りで何度も仕掛けていた。3回くらい。それでも涼太がすぐ後ろにいた。オーストリアの選手はそれで疲れたと思う。涼太も抜ける余裕もあったかもしれないけど、抜かなかった。最後の会場に入る手前でドイツが仕掛けた。オーストリアが先頭だったが、涼太がついていけて、オーストリアがついていけなかったのも、その前のスパートでの疲れがあったから。

28年ぶりのメダルはうれしい。河野ヘッドコーチもうれしかったと思う。ノルウェー、ドイツ、オーストリアに勝てないのではという時代を過ごしてきた。昔とはルールが変わり、後半のクロスカントリーで勝負できないとメダルは厳しくなった現在、日本は力をつけてきた。

渡部暁は北京に入るまでの今季W杯の戦いぶりを見ていて、果たしてメダルはどうかなと心配していたが、経験豊富なベテランらしさが出た。日本の次のエースは涼太。世界の他国の選手たちも涼太のことを認めるようになったはず。今後はクロスカントリーを強化したらW杯個人総合首位のリーベル(ノルウェー)みたいに勝ち続ける選手になれる。(94年リレハンメル五輪団体金メダリスト)