狙うは20年東京パラリンピック金メダルだ。仙台市立中田中3年の加藤真希は、短距離界のホープとして期待を集めている。知的障害のクラスT20の選手で、9月の年齢制限のないジャパンパラ大会(福島)と、10月の全国障害者スポーツ大会(愛媛)の女子100メートルでそれぞれ優勝を飾った。自己ベストは13秒44。同中学陸上部のリレーの選手にも選ばれている。パラリンピックは100メートルがないため、高校進学後は400メートルに取り組む。

 競技者の中でも、ひと回り小さい加藤の独走だった。ジャパンパラ大会。タイムは13秒64。大会記録まで0・01秒に迫る好記録だった。「尾形先生の笑顔が見たくて」と、笑みを浮かべ回想する。新星の登場に、大会を視察していた日本陸連の幹部から「早く400メートルをやって欲しい」と激励された。

 小学4年生の運動会のリレーで友達にほめられ、陸上を始めた。中学では陸上部に所属し、昨年4月に今の中田中に転校しても、陸上部に入部した。顧問の尾形隆寛先生(30)は「無口だった」加藤に細部の指示を伝えるため、実際にトレーニングをやってみせた。迎えた5月の国体県予選で優勝。10月の岩手国体でも13秒99で2位に輝いた。結果が出始め、社交的になった。

 若くして日本女王となった理由は何なのか? 尾形先生は「アキレスけんが強いから接地が強く、反発のもらい方がうまい」と分析する。体の強さも魅力だ。故障が付きものの陸上だが、3年間でケガは1度もない。接骨院でのケアも欠かさない。「体は強いですね。よく寝ているからかな」と目を細める。

 T20の日本記録は100メートルが12秒98、400メートルが61秒05。単純計算で100メートルのタイムを4倍にして、9秒足すと、予想タイムが見えてくる。この計算式を当てはめると、加藤の400メートルの予想タイムは62・76。成長すれば日本記録の更新は、現実味のある数字だ。400メートルの経験がない加藤は「100メートル×3本の練習で足が上がらなくなる」と体力不足に不安を残す。

 理由は分かっている。走りが小刻みなため、距離が延びれば足の負担が増してくる。そこで、股関節の強化が重要になる。室内トレーニングでは片足でホッピングを繰り返す。尾形先生は「股関節の可動を大きくしたら、誰にも負けなくなる」と太鼓判を押す。県内の高校進学後も尾形先生はサポートを続ける予定。加藤は「走るフォームを整えて、20年に金メダルを取りたい」とほほ笑んだ。【秋吉裕介】