ジャカルタ・アジアパラ大会(10月6~13日)の水泳日本代表・池あいり(20=日体大)が、出場する個人7種目すべてで自己ベスト、メダル獲得を狙う。現在、運動機能障害の3クラスで日本記録12、アジア記録6を保持。8月のパンパシフィック大会(オーストラリア)では100メートルバタフライで銅メダルを獲得した。アジア大会で6冠を獲得し、MVPに輝いた池江璃花子(18=ルネサンス)を目標に、パラ水泳界の注目度アップのためにも快泳を誓う。

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小麦色に日焼けした顔にはにかむような笑みを浮かべ、池は言った。「池江さんは出場したすべての種目で金メダルをほぼほぼ取ってますし、記録もどんどん塗り替えている。刺激になるというより、尊敬する選手です」。2歳下の女子高生スイマーのアジア大会での活躍に敬意を表し、言葉をつないだ。「私ももう少し近づいて、結果を残したいです」。

178センチの細身の体に長い手足。モデルのようなスタイルで今シーズンは記録ラッシュを続けてきた。現在保持する日本、アジア記録のうち8つを5~6月の欧州遠征で樹立。8月のパンパシ大会ではS10クラスに世界強豪が集結した中、100メートルバタフライで激しい競り合いの末に1分9秒24で銅メダルを獲得。同自由形では1分3秒91の日本、アジア新をマークした。直前のパンパシでメダルを取り、アジア大会に臨むのも池江とも重なる。

昨年から今年にかけてレース後半の持久力を養った。現在のテーマはスピード養成で、パワーアップのための筋力トレにも積極的に取り組んでいる。さらに「いろいろな種目に挑戦するのも今年のテーマ」と、800メートル自由形や400メートル個人メドレーなど、パラリンピック種目外のレースでも結果を残している。

それでも池は「記録はうれしいですが、欧米には強い選手がたくさんいる。世界を考えればアジア記録で満足はできません。20年東京へ自己ベストを更新し続けていくことが必要です」。15年世界選手権(英国)、16年リオ・パラリンピックで個人種目はすべて予選敗退に終わった。前回14年の仁川アジアパラ大会では50メートル自由形の金をはじめ4つのメダルを手にしたが、ベストタイムはマークできなかった。

ジャカルタでは個人7種目とリレー2種目にエントリーしている。「しっかり自己ベストを更新してメダル獲得を目指したい。池江さんのように結果を出し続けることで、パラ水泳も注目してもらえるようになれば…」。アジアパラのヒロインへ池が水を切る。【小堀泰男】

○…池は22日から3日間、横浜国際プールで行われたジャパンパラ水泳に出場した。個人では200メートル個人メドレー、100メートル自由形とバタフライの3種目で、いずれも日本記録を持っているが更新はならず。「アジアパラへしっかり調整します」とあらためてジャカルタでのベストパフォーマンスを誓った。また、今季から選手登録名を「池愛里」から「池あいり」に変更したことも明らかにした。

◆池(いけ)あいり 本名・池愛里。1998年(平10)9月12日、茨城県取手市生まれ。水戸市立五軒小3年の時、左大腿(だいたい)滑膜肉腫にかかり、抗がん剤治療後に腫瘍摘出手術を受け、左足首にまひが残った。それまではミニバスケットに熱中していたが、リハビリの一環として水泳を始め、同市立第二中入学後に競技活動に入った。東京成徳大高-日体大。14年仁川アジアパラ大会、15年世界選手権、16年リオデジャネイロ・パラリンピック代表。178センチ、62キロ。家族は両親と兄、弟。

◆アジアパラ大会 アジアパラリンピック委員会(APC)が主催する4年に1度の障がい者スポーツ総合大会。75年から9大会続いたフェスピック(極東・南太平洋身体障がい者スポーツ大会)を受け継ぎ、10年に中国・広州、14年に韓国・仁川で開催され、今回のジャカルタが3回目。APCには43カ国が加盟し、4000人を超える選手が参加して10月6日から13日の日程で18競技558種目が行われる。車いすテニス男女シングルス優勝者には20年東京パラリンピック出場権が与えられる。