湯浅亜実(AMI、25)が金メダルに輝いた。1対1のバトル形式で順番に技を披露し「技術性」「多様性」「完成度」「独創性」「音楽性」の5つの基準で得点を争う決勝で、リトアニアのドミニカ・バネビッチ(Nicka)に3-0勝利。パリ五輪唯一の初採用競技で、初代女王に輝いた。
クールで美しいダンスを持ち味とするAMIは、準決勝でオランダのインディアデビ・サルジュー(India)相手に第1ラウンドを奪われたが、第2、第3ラウンドと連取しての逆転勝ち。迎えた決勝でNickaとのパワームーブ合戦に加え、細かなステップワークで圧倒した。
AMIは「セミで決勝でやるムーブを出したので、決勝は楽しもうと思った。相手もNickaだし思い切りやろうと。泣きたいところですけど、まだあまり実感がない」と夢見心地の表情で振り返った。そして「自分らしさを出せました」と会心の演技に満足感をあらわにした。
五輪にかける思いは、やはり特別だった。18年に最高峰の世界大会で優勝。その後も世界選手権で2度の優勝を飾った。日本選手権3連覇の福島あゆみ(AYUMI、41)らとともに世界のブレイキンシーンをけん引してきた存在だが、パリへの道のりは決して順風満帆ではなかった。優勝者にパリの切符が与えられた23年の世界選手権では、前回女王がまさかの予選敗退。5月に中国で行われた予選シリーズで準優勝し、6月に内定したが「自分でプレッシャーを勝手にかけちゃうことがあった」と、重圧に押しつぶされそうになることもあった。
立ち直るきっかけになったのは、同じストリートカルチャーにあるスケートボード男子の堀米雄斗。パリ五輪で連覇を果たすことになる日本のエースは、6月の五輪予選シリーズ最終戦まで出場が限りなく危ぶまれる状態だった。それでも、同大会を制して起死回生で出場権を獲得した。湯浅はその姿を目の当たりにし「スポーツに限らず生きていく上で、1歩踏み出すのは大変なこと。心が折れそうになったことも絶対にあると思うけど、あの場面で力を出し切れたのはすごい」と、突き動かされた。
今大会も「昨日とか今日の朝とかは、今までにないそわそわ感を感じていて…」と揺れ動く思いはあった。それでも、そのプレッシャーを力に変え、予選は3連勝の全体1位で決勝トーナメントへ進出。夢の舞台でも、「BガールAMIってこういうものだ。ブレイキンってこういうものなんだと知ってもらいたい」と全力を振り絞った。
姉の影響で小1からヒップホップダンスを始め、小5の時にブレイキンに出会った。流れるような自然な動きと、洗練されたダイナミックな技を持ち味に、数々のステージで結果を残してきた。AMIについて、周りの選手たちが口をそろえて言うのは「努力家」。周囲の人たちから止められない限りは、いつまでも練習を続けているという“練習の虫”。食事も栄養バランスなどを徹底管理するストイックさを持つが、本人は「自分らしく全力で楽しむことが一番」と明るい表情で笑う。
パリへは「特に何かを変えることはない」。今まで通りの練習を貫けば、結果は出ると信じていたからだ。埼玉出身のバックナンバー好きの25歳が、花の都の表彰台で真っ白な歯を輝かせた。



