シンデレラガールが東京オリンピック(五輪)代表の座を射止めた。一山麻緒(22=ワコール)が冷たい雨をものともせず、日本歴代4位の2時間20分29秒で優勝した。1月の大阪国際女子マラソンで松田瑞生(ダイハツ)が記録した2時間21分47秒を上回って条件を満たし、マラソン女子代表の最後の1枠に決まった。野口みずきが持っていた2時間21分18秒の日本人国内最高記録を塗り替え、大会記録も更新した。

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一山選手は、フォームがすごくいい。腰高で、お尻の位置がすごく高い。腕振りもしっかりしている。まるでアフリカ勢のような走り。ストライド型で筋力の強さを感じるし、体幹も強い。厚底シューズにも合う走りだと思う。単独走となった30キロからもフォームが乱れなかった。1キロ3分15秒前後に上げていたが、精いっぱいのペースではなく、まだ余裕を感じた。

スタート時は気温9・1度で雨。悪天候のレースではぬれたままだと体温が下がり、体力を奪われる。2キロ地点でペースメーカーが肉離れになったように、けいれんのリスクもある。一山選手は31キロ過ぎでぬれたアームウオーマーを外し、冷静に体温低下も防いだ。

昨年3月の東京から1年でマラソン4度目。普通は1年で1、2回が限度なのに本当にタフ。私が記録した国内最高記録(03年1月、大阪国際の2時間21分18秒)を上回ってくれて、うれしい。最近は低迷していたマラソンに光が差してきた。五輪メダルを考えると、世界のトップとタイムで少し差があるが、2時間19分、20分を切る気持ちで練習していけば、世界と戦える。他の選手も刺激を受けて強い日本女子マラソンを取り戻してほしい。(04年アテネ五輪金メダリスト)