9日に東京・国立競技場で行われる陸上の東京オリンピック(五輪)テスト大会に向け8日、オンラインで記者会見が行われた。国際オリンピック委員会(IOC)が東京五輪・パラリンピックに出場する選手団に米ファイザー社製の新型コロナウイルスワクチンを無償提供すると発表したことに関し、出場する日本のトップ選手4人が私見を述べた。

   ◇   ◇   ◇

女子5000メートルに出場する新谷仁美(33=積水化学)は、ワクチンに関する質問に、はっきりとした口調で答えた。

新谷 自分が打たないことで他の人に危険が及ぶのであれば打つ。ただ、(接種後の)症状はどう出るかは分からないので正直、恐怖もあり、打ちたくないという気持ちはある。個人の意見だが、命に大きい、小さいは全くない。アスリートだけが、五輪選手だけがというのはおかしな話。優先順位をつけること自体がおかしい。平等にどの命も守らないといけない。平等に考えていただきたい。

昨年12月に1万メートルで東京五輪代表に内定した時の会見でも、副作用などを懸念し、「受けたくありません」と述べていた。

今回は女子1500メートルにエントリーしている東京五輪5000メートル代表の田中希実(21=豊田自動織機TC)も恐怖心は拭えない。

田中 私個人としては、まだ少し怖いというのがある。アスリートは選ぶ権利を与えられただけ。

女子100メートル障害の寺田明日香(31=ジャパンクリエイト)は「打つ必要性がある」という認識だが、胸中は複雑だ。

寺田 感染の不安、負担を強いてしまうことにつながるので打つ必要性があると考えている。私たちが断れば、皆さんに渡るのであればうれしいが、そういうことはかなわない。動向を見ながら考えていきたい。

男子100メートルの桐生祥秀(25=日本生命)は「高齢者の方が優先」。しかし、それ以上の答えは、まだ見つけられていない。

桐生 自分の意思をしっかり持って、どこかで発言できるようにしたい。

“正解”なき議論。その答えにくいテーマに考えを巡らせた。【上田悠太】