男子100メートルで前日本記録保持者のサニブラウン・ハキーム(22=タンブルウィードTC)が決勝に滑り込んだ。無風だった準決勝は1組で10秒30の3着。自動進出ラインの2着に入れず、残り2組の3着以下とタイムで2枠を争った。取材対応中に決勝進出が決まり「あ、通ったんすか。運良かったですね。通ったからには準備して、誰も注目しないんで、優勝かっさらって帰ろうかなと思います」と強気な姿勢を見せた。

2年ぶりの日本選手権だった。5月31日に拠点の米国で約1年7カ月ぶりの実戦をこなしたが、追い風参考3・6メートルの条件下で10秒25。前日本記録であり、自己ベストの9秒97とは対照的な記録だった。この日の予選は追い風0・5メートルで10秒29。準決勝は序盤の10~20メートル付近で、ふくらはぎをつる感覚があった。記録は伸びていないが「感覚自体は悪くない」と前を向く。

3位以内で初の五輪切符を得る決勝。17年に東京・城西高を卒業し、米国ではプロになった。新型コロナウイルスの影響も受けながら、独自路線でここまできた。「2年ぶりの日本選手権で『帰ってきたな』っていう感じがして、とても(応援が)温かいですね」。逆境だからこそ、ゆとりがある。一発勝負に懸ける。【松本航】

 

◆男子100メートルで東京五輪代表切符をつかむには? 五輪の参加標準記録の10秒05を突破し、今回の日本選手権で3位以内に入れば代表選手に決まる。山県、サニブラウン、桐生、小池、多田の5選手は既に記録をクリアしており、タイムに関係なく3位までに入ればOK。残る柳田、デーデー、東田の3選手は、10秒05を突破した上での3位以内が求められる。