陸上の日本選手権(大阪・ヤンマースタジアム長居)の男子100メートル決勝は今日午後8時30分に運命の号砲を迎える。たった3枚の東京オリンピック(五輪)切符を懸けた運命の一発勝負だ。スタートラインに立つのは2レーンから以下の8人。

東田旺洋(25=栃木スポ協) ベスト10秒18 予選10秒44 準決勝10秒35

サニブラウン・ハキーム(22=タンブルウィードTC) ベスト9秒97 予選10秒29 準決勝10秒30

山県亮太(29=セイコー) ベスト9秒95 予選10秒27 準決勝10秒16

桐生祥秀(25=日本生命) ベスト9秒98 予選10秒12 準決勝10秒28

多田修平(25=住友電工) ベスト10秒01 予選10秒26 準決勝10秒17

デーデー・ブルーノ(21=東海大) ベスト10秒20 予選10秒29 準決勝10秒21

小池祐貴(26=住友電工) ベスト9秒98 予選10秒42 準決勝10秒30

柳田大輝(17=東農大二高) ベスト10秒22 予選10秒35 準決勝10秒22

山県、サニブラウン、桐生、小池、多田の5選手は既に東京五輪の参加標準記録(10秒05)をクリアしており、「3位以内」で代表に決まる。東田、デーデー、柳田の3選手が代表に入るには「10秒05」を突破した上で「3位以内」が求められる。東田、デーデー、柳田が10秒05に届かずに3位以内に入った場合は、参加標準記録を突破している5選手の中から上位順で代表は決まる。

優勝争いの中心は6日に9秒95の日本新記録を樹立した山県になるだろう。予選、準決勝とも余裕のある走り。12年ロンドン五輪、16年リオデジャネイロ五輪と自己新を出しているように、大舞台にこそ実力を出し切れるタイプ。前日24日には「予選から準決勝で走りのイメージを少し変えた」。体の角度を調整し、スタートに手応えを得た。決勝では完璧に合わせられそうだ。

6日に10秒01と自己ベストを更新を出し、参加標準記録も突破した多田は過去最高のコンディションで今を迎えている。向かい風でもタイムは大きく下がらず、課題である後半の失速も、以前より改善される。序盤で先行できるレースパターンは、ライバルに力みを生む可能性もある。「余力を持って決勝に進めた」と話しており、初の栄冠も十分視野に入る。

桐生は5月末に痛めた右アキレス腱(けん)の状態が万全ではない。だが、25日のレースは決勝1本だけ。予選は10秒12、準決勝は10秒28。「痛いとかは言っていられない。(決勝は)タイムを上げていきたい」。最後は気持ちで走る。

サニブラウンは準決勝の10~20メートル付近でふくらはぎがつる感覚があったという。まだ明らかに本調子ではないが、「誰も注目しないんで、優勝かっさらって帰ろうかなと思います」と強気な姿勢は変わらない。17年日本選手権も前評判を覆して、2冠を達成しただけに、決勝に一発合わせてくる可能性はある。

小池は中盤以降の伸びは目を引くが、9秒98を出すなど好調だった19年の頃に輝いていたスタートはいまひとつ。準決勝は桐生を意識し、接地が悪くなっていたという。「周りを気にしないこと。真っすぐ見るだけ」と前日の反省を生かし、大一番に挑む。

奈良・一条高、筑波大を経て、現在は栃木県スポーツ協会に所属する東田は、6日に10秒18の自己ベストを出した。勢いに乗っている。ナイジェリア人の父を持つデーデーは東海大4年生。向かい風に強いのも特徴で、コンディションもよく、上位争いをかき回す可能性もある。群馬・東農大二高3年の柳田は昨年の7位に続き、2年連続となる決勝進出。準決勝ではサニブラウンに先着し、そしてタイムは東京・城西高時代のサニブラウンに並ぶ高校歴代2位タイとなる10秒22をマーク。若さを武器にチャレンジャーとして走る。