新型コロナウイルス感染拡大後、オリンピック(五輪)競技では国内で初めて海外選手を招いて行われた体操の国際大会「Friendship and Solidarity Competition(友情と絆の大会)」が8日に東京・国立代々木競技場で開催されたことを受け、国際体操連盟(FIG)の渡辺守成会長が10日、都内の東京五輪・パラリンピック組織委員会に出向き、知見共有と意見交換を実施した。

冒頭、渡辺会長は「本大会で学んだ知見の一部を組織委の皆さんと共有した。まだまだ、ほかにもある。時間をかけて共有していきたい。内村(航平)選手をはじめ、参加した選手の方々が勇気を振り絞って演技し、五輪への熱い思いを示してくれた。選手目線の大会運営が最も大事だ」とあいさつした

開催に当たって、海外勢の移動はチャーター機を含み、ホテルは国別で1フロアを貸し切った。専用バスでの会場との往復以外は外出禁止。日本滞在中は、毎日のPCR検査を選手団に義務付けた。海外の国際大会と同様に「バブル」状態をつくったことには、同会長が「今回のコロナ対策は成功した。選手が、なすべきことも理解し、ルールを守ってくれた。これを五輪でも参加選手全員に共有できれば。選手もコーチも大会役員も、国民の皆さんもメディアの皆さんも、みんなゴールは同じ。安心安全な五輪の開催へ一致団結して向かってもらいたい」と述べた。

選手の反応については「出迎えと見送りにも行ったが、入国時は目が少し恐怖に支配されていた。感染せずに済むのだろうか、という心配が瞳の奥に見られたが、最後は喜びが伝わってきた。私が言うより、選手の喜びのツイッターを見てもらえば分かる。どこの国かは言えないが、帰国するより日本に居続けたいと話していた選手もいた。パリ五輪組織委のトニー(・エスタンゲ会長)からは『勇気をもらった』とメールが届いたし、誇りに思う」と手応えを口にした。

組織委の中村英正ゲームズ・デリバリー・オフィサー(GDO=大会開催統括)は感謝した。「入国、宿泊、輸送など1つ1つアドバイスをいただき、非常に参考になった。最も大事なことはコミュニケートをして安全安心な大会をつくっていくこと。選手に、単に『ルールを守ってください』ではなく、まず組織委から『こういうことをやります』と伝えれば、選手や関係者も『だったら、こういう協力ができる』となるように」と理想型を語った。

今回は約30人のアスリートを招き、1日限りのイベント。来夏の五輪は1万1000人で17日間。これに中村GDOは「五輪もパラも各会場1日1試合の積み重ね。まずは11月の頭に、まだコロナが不透明な中で万全な対策を実際に講じて無事に大会が行われたことはメッセージとしても大きい。最近は『論より証拠』と言い続けているが、示してもらったのは大きい」と受け止め、プロ野球の横浜スタジアムや東京ドームでの実証実験を含め「観客(を増やしての実験)については横浜スタジアムと東京ドームで。海外選手を招いては今大会。1つ1つの体験を通じて学びがあり、それを生かしていくことが来年の安心安全な大会に近づく1番の近道。今回、足元・東京で国際大会が行われたことは非常に参考になったし、内村さんをはじめ、いろんなメッセージもいただいて大きな励みにもなった」と話した。

最後に、内村がPCR検査で「偽陽性」となって混乱したことから得た教訓として「検査結果への対処は想定事案として話し合っているが、結果的に内村選手が無事に出場できて、素晴らしい演技をしてくれたことを結果オーライにしてはいけない。IOC(国際オリンピック委員会)IF(各国際競技団体)WHO(世界保健機関)と意見交換しながらルールをつくり、IF、NOC(各国・地域オリンピック委員会)やアスリートと共有をすることで、安全と安心を両立した大会を実現したい」と締めくくった。【木下淳】