新型コロナウイルスの影響で来夏に延期された東京パラリンピックの開幕まで24日、ちょうど1年となった。

日刊スポーツは東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの延期に伴う追加経費を削減するための簡素化検討案のリストを入手。大会組織委員会と国際オリンピック委員会(IOC)はこの案をもとに現在、水面下で交渉を重ね、簡素化について9月下旬の大枠合意を目指している。

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数千億円に上るといわれる追加費用を1円でも削減しようと組織委職員は、計画の再検討案に向き合っている。一時は約250項目に広がった簡素化案は重要度順にα、β、γに分類された。そのうち、γはさらなる検討はしないと決め、現在は重要度の高い「ゴールドリスト(α)」約60項目を優先的に、約150項目を精査している。

大きな削減要素として期待されるのはIOC委員を始めとした五輪ファミリーや国内オリンピック委員会(NOC)各国際競技団体(IF)から来日する大会関係者をどれだけ減らせるか。

IOC委員やNOC、IF幹部は高級ホテルに宿泊し、各会場に設けられた高級感あふれるラウンジで、華美なおもてなしを受けるのが通例。人数が減れば旅費や輸送費が削減できる。一方で人数の増減を問わず、飲食の過度なサービスレベルを下げるべく、組織委はIOCなどと粘り強く交渉している。

47都道府県を回る聖火リレーは日数短縮も検討されたが、各自治体の賛同を得られず121日間を維持する方針を固めた。開閉会式の時間短縮案は放送権を理由にIOCから却下されたが、組織委は諦めていない。開閉会式の簡素化は象徴的に映るからだ。

努力が実り9月末に簡素化案が大枠合意できたとしても、次に検討するコロナ対策によっては簡素化案と相反する部分が出て、再検討が必要となるかもしれない。例えば選手や関係者を運ぶバス。経費削減のため車両を減らしたいが、コロナ対策としては座席間を空けて座るべきで、むしろ一定の車両数が必要になる。

無観客や観客の間引きの検討も同様で「プロ野球やJリーグ、世界のスポーツが観客を入れて開催していれば五輪もおのずとそうなる。逆もしかり。だから年内に方針を固めるのは難しい」と組織委幹部。感染状況次第で真っ先にやり玉に挙がる五輪行政だけに開催実現に向け秋以降、慎重なかじ取りが必要となる。

◆簡素化検討案メモ スポーツプレゼンテーションとは、観客がより高揚して競技観戦できるよう会場内の大型ビジョンで動画を流したり、音響設備で音楽を流すこと。最近のスポーツビジネスでは当たり前の演出だが、華美な部分を排するため見直しを検討している。五輪シンボルや大会マスコット像の大型モニュメントを都内十数カ所に設置する計画も見直す可能性がある。会場の傍らで音楽ライブなどを行うサーフィンフェスティバルは同競技ではなじみの催し物。五輪初採用となる東京大会でもサーフィンならではの文化が期待されたが、これも規模が縮小する可能性がある。