東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの選手村で、選手や関係者が生活する居住棟内に監視員を配置できない見通しであることが22日、大会関係者への取材で分かった。新型コロナウイルスの感染防止を図る上で大会組織委員会は、中央区晴海の選手村内に監視員を配置する方針だが、公共スペースのみにとどまる方向。居住棟内にある会議室等で、複数人による飲酒が行われても注意や警告ができず、感染対策に穴が出る可能性が出てきた。

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数百人規模の大選手団を編成する国には選手村のマンション1棟をそのまま提供する。その中には会議室など一定の人数が一堂に集まれる場所がある他、8人が生活する5LDKの大部屋もある。関係者によると居住棟は自宅同等のプライベート空間との位置づけで監視員を配置できないため、会議室等で祝勝会などの宴会が開かれても組織委側は注意、警告はできない。

小規模の選手団は1棟に複数の国と地域が混在して生活する。その場合、他国間でのチェック機能が自然と働くが一国への「1棟貸し」ではチェックが十分に働かず、感染対策が徹底できない可能性が出てきた。

関係者によると、入村時に持ち込める酒量は1人当たり5リットル。過去大会ではその上限を超えたり、村内で大宴会を開く国もあった。

また、国際オリンピック委員会(IOC)が組織委に容認を求めている食料品宅配サービス「ウーバーイーツ」などの利用が村内で可能になれば、追加でアルコールを注文できる。

IOCバッハ会長が21日の会見で「村に居住する選手、関係者のワクチン接種率は既に81%となった」と説明。しかし、19日に来日したウガンダの選手1人が自国で2回ワクチン接種し、陰性証明書まで持っていたが成田空港で受けたPCR検査で陽性が判明した。

組織委幹部は「ワクチンが万能でないと分かった」と危機感を募らせる。接種率の高まりで気が緩み、監視の目が届かない居住棟で、宴会が行われれば、徹底した感染対策も形骸化する恐れがある。

◆選手村内での飲食、飲酒ルール 酒の持ち込みは許されているが、各自の居室やプライベートな場所でのみ飲酒を可能とした。公園などの公共の場での飲酒は禁止されている。選手村のガイドブックに記載される見通し。コロナ対策の規則集「プレーブック」では村内での選手との距離は2メートルを確保するよう記載されている。食事や飲酒の際も同様に距離を取り、飲食時以外はマスクを着用するよう求めている。