20歳のホープ佐藤翔馬(東京SC)が男子100メートル平泳ぎを連覇した。

決勝のタイム59秒30は、個人での派遣標準記録にはわずか0秒09及ばなかったが、400メートルメドレーリレーのタイムは突破。200メートル平泳ぎでは世界歴代4位のタイムを持つ慶大3年生は初の五輪代表入りを決めた。女子400メートル自由形は小堀倭加(20=セントラル戸塚)が4分6秒34で優勝し、100分の2秒差で2位だった難波実夢(18=MGニッシン)とともに五輪の切符をつかんだ。

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電光掲示板を確認した佐藤は、右手で小さくガッツポーズをした直後、少し首をかしげた。連覇はうれしかったが、準決勝では突破できた個人の派遣標準記録には及ばなかった。前半50メートルの28秒30は8人中8番目。「落ち着きすぎてしまったかな」。いつもよりストロークが大きくなりすぎた。ただ、後半の追い上げはすさまじく、全員まくった。メドレーリレーの代表は死守。「優勝できてよかった」としみじみ話した。

慶応の幼稚舎時代、慶大の先輩で学校を訪れた立石氏に12年ロンドン五輪銅メダルを触らせてもらった。「僕も出たいなあ」と憧れた。中3の時に全国大会で4位。生まれたのは4代続く医師の家系。父新平さんらからは「もういいんじゃないか」と、それとなく医師の道を勧められたが、「やだ」と断った。父からヨットに乗せる前に、水泳を習わせられたことが始まりで、夢中になった競泳の道。最高の舞台にたどり着いた。

五輪2大会連続2冠の北島康介氏と同じ名門・東京SC出身だ。小3時は水泳会場でサインペンとTシャツを持って北島氏、立石氏らの後ろをついて回った。そのTシャツを宝物として自宅に飾っていた少年は、昨年1月の北島康介杯で頭角を現し、五輪延期の間にも一気に成長を続ける。

本職は200メートル。渡辺の日本記録まで0秒07に肉薄する。決勝は7日。「無難に代表権を獲得するのが一番の目標」とした上で「しっかりやれば、おのずとタイムもついてくるのではないか」。次こそ個人で五輪の権利を取り、偉大な先輩に続ける存在へと駆け上がっていく。【上田悠太】

◆佐藤翔馬(さとう・しょうま)2001年(平13)2月8日、東京都港区生まれ。0歳から水泳教室、小3で東京SCに入る。高1から西条健二コーチに師事。慶応高-慶大。19年世界ジュニア選手権200メートル平泳ぎ銀メダル。趣味はラーメンめぐり。好きな食べ物はタピオカと牛タン。177センチ、74キロ