無観客でも秘策あり。オープン参加の日本代表が、チームFRに登場した。「今日はお祭り!」を披露して93・6667点をマークした。「日本のお祭り」をテーマにホームの声援を力に変える狙いだったが、コロナ禍で東京五輪は無観客の可能性がある。井村雅代ヘッドコーチ(HC、70)は、観客なしも想定して、入念な準備を進めている。

全国の祭りばやしをちりばめたチームFR。19年の決定時は、地元観客の存在が前提だった。終盤には手で観客をあおるしぐさもある。無観客ならアドバンテージはなくなるが、百戦錬磨の井村HCは、ただでは転ばない。「観客がいると音が服に吸収されて、拍手でかき消されるから高い音を使う。でも無観客なら、高音と低音を使って、曲の抑揚までよく聞こえる。音楽からかなりの力をもらおうと思う。あるものからは何でも力をもらいます」。

無観客の今大会も3種類の音源を準備して、音楽の専門家も同行。選手の演技が引き立つ、音の領域を模索中だ。4月のロシア遠征は当初、無観客だったが、3階席のみPCR検査を受けた客を入れたという。「日本に連絡してデータをパソコンに送ってもらってCDに焼きなおした。世界はデジタル化されている。パソコンがあれば、いくらでも受け取れる」ときっぱり。吉田は「スコアを出すのは審判。そこに伝わればいいなと思う」。コロナ禍で変化する環境をいいわけにせず、知恵を絞ってメダルを追求する。【益田一弘】

○…デュエットテクニカルルーティンで日本代表の乾、吉田組が、ボーカロイド初音ミクとコラボした「忍者SAKURA」で92・3760点を出した。4月のロシア遠征後に、足を出す高さを上げることを決断。調整の途中で、不完全燃焼の部分もあったが、乾は「(初音)ミクちゃんの声が会場でさえわたるので、私たちもさえた演技とエレメンツ(規定要素)を決めたい」と完成度を上げていく。