【樋口新葉〈中〉】「凄かったなぁ」13歳の転機 「そういう運命」16歳の失意

日刊スポーツ・プレミアムでは、毎週月曜日にフィギュアスケーターのルーツや支える人の思いに迫る「氷現者」をお届けしています。

シリーズ第6弾、樋口新葉(ノエビア/明大)の全3回の第2回です。現在は休養を決断して、リンクから離れる時間を送ります。「中編」では、かつてない注目度を集めた2014年の全日本ジュニア選手権から平昌五輪の代表争いへ。一気に主役の1人となっていく過程を追います。(敬称略)

フィギュア

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14年全日本ジュニアで優勝した樋口新葉(中央)。左は2位の坂本花織、右は3位の永井優香

14年全日本ジュニアで優勝した樋口新葉(中央)。左は2位の坂本花織、右は3位の永井優香

キラ星世代の競演 14年の全日本ジュニア

雪国の深夜の高速道路は、どこまでも続いていくようだった。

母の運転で、目指すは東京だった。

「ボロボロだったなあ」

13歳の樋口は、新潟から帰京する車内で思い返していた。

少し前まで滑っていたのは、その年の冬、14年2月に開場したばかりのスケートリンク「新潟アサヒアレックスアリーナ(現MGC三菱ガス化学アイスアリーナ)」。

そこは1週間後の11月22日に開幕が迫っていた全日本ジュニア選手権の会場だった。

「お母さんも私もみんな一生懸命だったから、『じゃあ慣れといた方がいいよね』と。全部先回りして、お母さんも貸し切り取ってくれたので」

できたばかりで未経験だったリンクの視察だった。夜の練習時間を終えると、深夜に住まいのある東京に戻る日帰り遠征。

「あの全日本は本当にすごかったですね」

今でも振り返る口調に興奮がよみがえる、熱を帯びる。スケート人生にとって大きな転機だった。

13歳で出場した14年全日本選手権、女子フリーで演技する樋口

13歳で出場した14年全日本選手権、女子フリーで演技する樋口

坂本花織、永井優香、本田真凜、青木祐奈、三原舞依、新田谷凜、白岩優奈

カメラから逃げていた。初めての経験だった。

「アップの時にテレビのカメラマンさんがいて。なんか『すごい隠れながら撮ってくる』って思って(笑い)」

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スポーツ

阿部健吾Kengo Abe

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。