【キーガン・メッシング 最後の舞台〈上〉】「スケートは愛だと、心から信じている」

今季の最終盤を飾る世界国別対抗戦が4月13日に東京体育館で開幕します。その舞台を選手生活最後の舞台と決めているキーガン・メッシング(31=カナダ)が、先月の世界選手権の最終日にインタビューに応じました。引退を決めた理由、家族との日々、これからの人生、そして日本との縁。上下編の2回に分けてお送りします。

フィギュア

〈4月13日開幕 世界国別対抗戦で選手生活に別れ〉上編

「キーガン・メッシング最後の舞台へ」上下編

世界選手権男子フリーで演技するキーガン・メッシング

世界選手権男子フリーで演技するキーガン・メッシング

日本のファンの手拍子や声援、泣き崩れそうだった

――まず、この大会を振り返っての感想を御願いします。

メッシング さまざまな感情が渦巻いています。いまも、喜んでいるのか悲しんでいるのかさえもわからないほどです。昨晩の氷上では、涙が出そうになりながら開始ポジションに着きました。(登場ゲートの)階段を上り、ケビン(・エイモズ)があのようなパフォーマンスを披露するのを見られましたからね。最初から最後まで、本当に気持ちが渦巻きました。彼はいつも僕の大親友なんですが、あんなに素晴らしいパフォーマンスを披露してくれるなんて、本当に素晴らしいことです。そして、それに続いて、まだ私の名前もコールされていないのに、観客はすでに手拍子や声援を送り始めてくれていて、その光景に感動してしまいました。本当に泣き崩れそうでしたね。でも、気持ちを戻して、自分のポジションに立つことができました。音楽が始まると、すぐにプログラムのために練習してきた事を出せましたし、惜しくも幾つかのミスはありましたが、力強く演技を終えることができましたし、うれしかったですよ。望んでいたのはこのプログラムではありませんでした。でもね、十分です。

――多くのカナダ国旗も振られていましたね

メッシング 素晴らしかったですね。ウオームアップ(6分間練習)の時、観客の反応がすごかったんです。みんな手を差し伸べてくれて、一緒に滑ろうと心を寄せてくれているような気がして。氷の上がとても暖かく感じられました。

――試合後にご家族と連絡は取られましたか

メッシング 午前2時までは電話を待ちました。こちらの午前2時がアラスカの午前9時なので。息子と話すことができましたし、妻も少し時間をつくって、1年間を振り返ることができました。落ち込むことも2、3度ありましたけど、どの大会でも楽しかったと。メダルのために滑っているわけではないんです。メダルのためではなく、経験を積むために滑ってきたのだから、その目標は達成されたと言えますよね。メダルを取って帰りたかったし、きれいなプログラムを作って帰りたかった。私が言えることは、全力を尽くして、自分のできる限りの演技をしたということです。

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スポーツ

阿部健吾Kengo Abe

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。