【荒川静香〈上〉】20歳を超えて出合ったアイスショーの世界 葛藤を抱えた選手生活の先へ
日刊スポーツ・プレミアムでは毎週月曜に「氷現者」と題し、フィギュアスケートに関わる人物のルーツや思いに迫っています。
シリーズ第33弾は、トリノオリンピック金メダリストの荒川静香(42)の今を追います。プロスケーターとして19年目を迎え、8月30日~9月1日には「フレンズ・オン・アイス」(KOSE新横浜スケートセンター)も控えます。3回連載の第1回では、アイスショーとの出合いが導いてくれた競技者としての終幕を振り返ります。(敬称略)
フィギュア
プロになってから18年
練習場の入り口から姿を見せた荒川は、40年近く感じてきたリンクと外気の寒暖差に身を浸しながら、休むことなく次の目的地へ向かおうとしていた。
脇にスケート靴が入ったバッグを抱え、背筋が伸びた歩き方は、選手時代から「クールビューティ」と呼ばれてきた凜(りん)とした印象を感じさせるが、続けた言葉にはユーモアがあった。
「もうリハビリみたいになってますけどね」
微笑が浮かぶ。もちろん、冗談まじり。
「日常に追われながら、1時間、こうやって練習に来させてもらってますが、スケーターとしてあるために必要な体作りを日々十分に過ごせているわけではないで、本当に合間を縫ってという形で」
2006年5月8日、トリノ五輪の興奮冷めやらぬ世は、「イナバウアー」の合言葉一色だった。その日、荒川はプロへの一歩を踏み出した。
それから18年が過ぎた。もう、5歳から始めたスケート歴は40年近く。24歳で区切りをつけた選手生活に、プロ生活の長さが並ぼうとしている。
「若い時には日々をスケートのために過ごすことができていたなという感じは、今思えばあります。ただその時はその時で、年代ごとに大変さは変わってくるとは思いますし、求めるものも変わってくるとは思います。あとは時代とともに、アイスショーに求められるもの、視点にしてもそうですし、何を求めてきていただいているのかという部分も変わってくるので。そこを常にキャッチしようとしながら、それによって何を届けられるかと考えていかなければいけないので」
移動の車中に乗り込むと、職業として滑り続けてきた年月、変わらずに追求してきた根幹が滑らかに熱を帯びる。
これから向かう場所では、「フレンズ・オン・アイス」の取材会が行われる。
18年前、プロとしての第1歩を踏み出したアイスショー。今年もまた、多くの仲間を集めて開くことがかなった。
あの時、心を奪われたショーの世界にいまも包まれる幸せを感じる。
米国で知ったアイスショーの素晴らしさ
「こんな世界があるんだ」
人生の大きな分岐点は選手生活の晩年だった。
2003-2004年シーズン。拠点を米国に移した。
決して望んでの渡米ではなかった。旅立ちの空港ではハワイの旅行本を楽しそうに眺めていた。
「気持ちだけでも、行った気になれれば楽しいから」。
早く帰りたいと思う場所だった。
ただ、そこで本場の文化を知った。それがアイスショーだった。
「本当にすてきだなと思ったんです」
これまで国際大会で競い合ってきた海外のライバルたち。少し早く引退をしてプロの世界に進んだ彼、彼女たちの姿に目を見張った。
「すごく輝いて見えて。知っていた選手のイメージから、もっと広がって、膨らんで。これまでは見えなかった表情であったり、見せ方であったり、エンターテイナーだなって感じる部分がすごく多くて。一緒に作り上げる世界ってすてきだなって思ったんですよね。競技しかフィギュアスケートを知らないで育ってきたので」
頭の中に浮かんだキーワードがあった。
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2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて17年。25年4月に初の異動で野球部へ配属となりました。競技経験はありませんが、現在は息子が通う少年野球チームで“球拾い”コーチとして奮闘中。記者としても、様々な話題を拾います。ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。クラフトビール好きです。
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