【荒川静香〈下〉】母、先駆者として 子に伝え、体現していくスケーターとしての未来
日刊スポーツ・プレミアムでは毎週月曜に「氷現者」と題し、フィギュアスケートに関わる人物のルーツや思いに迫っています。
シリーズ第33弾は、トリノオリンピック金メダリストでプロ生活19年目に入った荒川静香(42)のいまを描いてきた3回連載は最終回を迎えます。8月30日 ~ 9月1日にはフルプロデュースで18回目を迎えるアイスショー「フレンズ・オン・アイス」(KOSE新横浜スケートセンター)も控えます。いまも変わらずにスケーターとして望み続ける事、母としての人生との両立を続けてきた理由が体を動かしていました。(敬称略)
フィギュア
それはつい最近のことで、よくある事の一例。
練習のためにスケートリンクに着いた直後の事。電話が鳴り、有事を使える。
「子供が熱を出ましたと学校から連絡がくる。もうすぐにUターンですね」
子育てをしていれば、スケーターであろうとなかろうと、直面する予定外の事態。
受け止めながら、すぐに考えをめぐらす。
「『これで練習が3日空いちゃうな』って。『じゃあどこで何しよう』みたいなのを常に臨機応変に求められますよね」
プロスケーターとして生きていくことを決めた。
日々の滑り込みは当然の仕事だ。母であること、家族と人生を生きていくことを両立させながら、日々を続けてきた。
「パズルみたいだし、予期せぬピースが降ってきて、『これは諦めなきゃいけないのか』という、そのやりくりはありますね。自分の体の維持は本当に難しくて。優先すべきは自分じゃないので。でも、やはりお客様に対しては、自分がどんな状況であろうと準備をして、ちゃんと満足のいくものに持っていかなければいけない責任感もある。常にヒリヒリしますよね、精神が。それでも、やるのかやらないのかと言われたら、やりたい」
いつも睡眠不足。でも、スケートの深遠に触れるような感覚は手放せない。
「うまくなりたい」
いまも心からそう望んでいる。
プロになってから気づいた伸びしろ
5歳だった。
スキーがしたかった。混んでいるからという理由で連れてこられたリンクでのことだった。
氷の上で駆り立てられた。
「圧倒的に難しくて。それが始まりですね」
一足早く通っていた水泳では、できることがどんどん増えていた。6歳で4泳法をマスターし、将来を渇望されるようになるのは少し先のこと。
両立していたスケートは、できない事が常だった。だから水泳はすぱっと辞めた。
「『明日こそできるんじゃないか』『今日中にできるようになりたい』。そんな気持ちがあって」
アスリートの幼少期の原体験には、自然に出来たことの延長に競技者人生が続いている者のほうが多いと感じる。
手中に収めた感覚がしない、それを追求したい。ベクトルは逆を向くが、それが荒川を世界の頂点にまで押し上げた。そして、プロとして18年の時をへても、その根っこがいまも本質に根付く
「周りを見渡すと、才能の塊みたいな人がたくさんいて。面白いですね。自分が一番できない感覚が」
トリノで金メダルを胸に掲げてから数カ月後にも、心からそう感じていた。
「チャンピオンズ・オン・アイス」
歴代の五輪王者たちがそろうショー。北米、欧州、そして日本。
ツアーを一緒に回り、己を見つめた。
「ミシェル・クワンさん、サーシャ・コーエンさんなど。彼女たちはすごく華やかに見せる力があって。それって元々持ってる潜在的なものもあるし、スター性ってそうなのかなって、だから磨けば出るものじゃないのかなって。そういうものの代わりにどう表現すればいいんだろうって」
ツアー自体が撤退するまでの2年間、試行錯誤を続けながら、プロとしての道筋を定めようともがいた。
「見せ方というのは、彼女たちが選んでいる曲も彼女たちをより引き上げるものであって、その必要があるんだなと。同じようなものをやりたいから同じような道で磨いていくのも1つですが、自分らしさを見つけていく事が肝心で。見せ方がうまいわけでもなんでもないんだけど、自分らしいものを選んだら割と評価が良かったりするっていうことに気づきました」
日本人であるアイデンティティー。身体的な特徴も生かしながら、和のテイストを取り入れていくことが成功体験になった。
選手時代には突き詰めることはなかった要素。
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2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて17年。25年4月に初の異動で野球部へ配属となりました。競技経験はありませんが、現在は息子が通う少年野球チームで“球拾い”コーチとして奮闘中。記者としても、様々な話題を拾います。ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。クラフトビール好きです。
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