【みんなでつくる氷現者/村元哉中〈2〉】なぜ、現役引退後も〝かなだい〟と決めたのか

日刊スポーツ・プレミアムでは「氷現者」と題し、フィギュアスケートに関わる人物のルーツや思いに迫っています。

記念すべき第1回の配信は2022年10月10日、午前10時10分。日刊スポーツ・プレミアムが誕生した、その日から毎週月曜日の連載が始まりました。

あれから1015日。

2025年7月21日からの「氷現者」は第50弾特別版として、記念すべき第1弾に登場した村元哉中さん(32)の、その後をたどっています。

皆さんからいただいた質問を手に取材し、3回連載でお届けしている物語。中編は現役引退した2023年春以降も高橋大輔さん(39)と歩むことを選んだ決断、プロスケーター転向後に迫ります。(敬称略)

※お断り(8月4日)

皆さんからいただいた質問を手に取材し、当初は3回連載を想定していました。

しかし、丁寧に答えてくださった村元さんの言葉をありのままに届けようと考えた結果、急きょ4回の連載とさせていただきます。

フィギュア

氷艶の会場で笑顔を見せる村元哉中さん(本人提供)

氷艶の会場で笑顔を見せる村元哉中さん(本人提供)

【みんなでつくる】質問#4

最後のシーズンで1番印象に残っている光景は?

【みんなでつくる】質問#5

ラストシーズンのいまだに忘れられないことは?

【みんなでつくる】質問#6

大輔さんに声をかけた時、たまアリワールドであの様な素晴らしい景色を観られると想像していましたか?

村元が現役生活の1年延長へと腹をくくった、モンペリエの演技から364日後の出来事だった。

2023年の世界選手権は、さいたまスーパーアリーナでの開催だった。

パートナーの高橋とともに、すでに2022~23年シーズン限りで競技の世界から身を引くと決めていた。

3月25日、フリーダンス(FD)。リズムダンス(RD)で11位につけていた。

夏場に自らが編曲していた「オペラ座の怪人」。

時にはぶつかりながらも、滑り込んできた演目だった。

23年3月24日、世界選手権アイスダンスRDで演技する村元(右)高橋組

23年3月24日、世界選手権アイスダンスRDで演技する村元(右)高橋組

あの日の光景が忘れられない。

「世界選手権の時にお客さんが掲げてくれたバナーの数ですね。フリーダンスのスタートポジションに立つ時です。当時、ピンク色だったんですけど、私はすごく桜が好きで…。満開の桜を見ている光景でした。パッと大ちゃんを見たら、大ちゃんもお客さんをすごく眺めていました。私、その光景にも『すごくラストって感じているな』って、グッときちゃって…。ちょっとそこで泣きそうになったのですが、ぐっとこらえました。そこからのフリーはもちろん記憶にはありますけど、もう一瞬で。幸せな時間でした」

23年3月25日、FDの演技を終え抱き合う

23年3月25日、FDの演技を終え抱き合う

得点や結果より先に、演技への手応えが感情に出た。終盤のステップで互いの視線が交わり、幸せなひとときをかみしめているうちに、フィニッシュがきた。

抱き合い、2人そろって泣いていた。「Finally We did it!」。とっさに「やっとできた」と喜びを分かち合った。

「終わった後に『できた~!』って、パッと向いた時の大ちゃんの顔が忘れられないです。すごく『やりきった~!』とうれしそうで、グッときました。演技前から緊張感はありました。それでもスタートポジションに立つ時に『すごくいいな。これをかみしめないとな』と思って、曲が鳴った瞬間にモードに入りました」

アイスダンス日本勢過去最高に並ぶ11位。

ともに苦労を重ねながら歩んだ足跡は、結果にも示された。

23年3月26日、エキシビションで観客を魅了

23年3月26日、エキシビションで観客を魅了

23年、高橋大輔さん(左)とフロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートを訪れた村元哉中さん(本人提供)

23年、高橋大輔さん(左)とフロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートを訪れた村元哉中さん(本人提供)

思い返せば4年前。姉の小月を通じて、高橋の連絡先を聞いた。

7歳差の先輩へ「アイスダンスのことで…」と尋ねたことをきっかけに〝かなだい〟は産声を上げた。

あのころ、埼玉での光景を想像できたのだろうか。

「そんなそんな、想像していません。そもそも答えがどっちかも分からず、人生を懸けて聞いたので。パートナーとして組むとなっても、どこまでいけるか分かりませんでした。何となく私の予感で『いいところに行けるんじゃないかな』と勝手な妄想はしていたのですが、実際にやると大変でした。まさか自国の世界選手権で滑れるとは思っていなかったです」

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大学までラグビー部に所属。2013年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社。
プロ野球の阪神を2シーズン担当し、2015年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当。
2018年平昌冬季五輪(フィギュアスケートとショートトラック)、19年ラグビーW杯日本大会、21年東京五輪(マラソンなど札幌開催競技)を取材。
21年11月に東京本社へ異動し、フィギュアスケート、ラグビー、卓球、水泳などを担当。22年北京冬季五輪(フィギュアスケートやショートトラック)、23年ラグビーW杯フランス大会を取材。
身長は185センチ、体重は大学時代に届かなかった〝100キロの壁〟を突破。体形は激変したが、体脂肪率は計らないスタンス。