【箱根駅伝story】駒大3冠主将・山野力と大八木監督の絆/東京マラソン

いつも見守ってくださった監督のためにも-。主将として、駒澤大を3大駅伝「3冠」に導いた山野力(22)は、3月5日の「東京マラソン2023」で、人生初マラソンに挑む。そのスタートラインには、特別な思いで立つつもりだ。

陸上

〈3月5日号砲 東京マラソン直前企画〉

東京マラソンに挑む2人の箱根ランナーの物語!2部作でお送りします

大学駅伝3冠のゴールへと向かう駒大10区青柿(手前)を迎えるチームメートら。中央は大八木監督

大学駅伝3冠のゴールへと向かう駒大10区青柿(手前)を迎えるチームメートら。中央は大八木監督

「今も箱根のゴールシーンを思い出す」

今でも思い返すことがある。

2023年1月3日。東京・大手町での光景を。

「今もたまに箱根駅伝のゴールシーンを思い出します。やっぱり最高の瞬間だったので、あの頃に戻りたいなって」

山野力はさわやかに笑う。

入学した頃は思い描くことができなかった。

出走者として、主将として、箱根駅伝の優勝に貢献できる日を。大学駅伝で「3冠」を達成する日を。

「全然想像していなかったです。自分の目標は『1回でいいから箱根を走りたい』というものだったので」

21年大会で、箱根駅伝初出場。9区を務め10区石川(右)にタスキをつなぐ

21年大会で、箱根駅伝初出場。9区を務め10区石川(右)にタスキをつなぐ

2年で初出場9区、総合優勝に貢献

山野は山口・宇部鴻城高から、AO入試で駒大へ進んだ。「スポーツ推薦」ではなく、いわゆる「一般組」としてくくられる入学ルートだった。

高校3年の冬に好成績を収めていたことから、タイム上では学年内でトップレベルにつけていたが、入学当初はチームメートの脚力に驚かされた。

「同級生は実力のあるメンバーがそろっていて、先輩も本当に速くて。練習で距離走をしても、自分は置いていかれることが多かったです」

箱根駅伝を1度でも走りたい。そう意気込んでいたものの、当初はこうも思ってしまった。

「果たして自分は走れるのかなって。そうずっと考えながら、練習をしていました」

大学1年の頃はなかなか結果が伴わなかった。箱根駅伝での出走もかなわなかった。

ただ、レベルの差を感じながらも、1つだけ貫いたことがあった。

「思いをぶらさなかったことが大きいのかなと思います。なんとしても箱根を走るんだっていう思いで入ってきて。その目標だけは何とか果たしたいなと思っていました」

弱音を吐きそうになっても、グッとこらえた。置いていかれそうになっても、じっと耐えた。

その努力は、自分が思い描くよりもはやく結実した。

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岐阜県不破郡垂井町出身。2022年4月入社。同年夏の高校野球取材では西東京を担当。同年10月からスポーツ部(野球以外の担当)所属。
中学時代は軟式野球部で“ショート”を守ったが、高校では演劇部という異色の経歴。大学時代に結成したカーリングチームでは“セカンド”を務めるも、ドローショットに難がある。