【箱根駅伝story】あぁ、俺はやったんだ…創価大・嶋津雄大が見た景色/東京マラソン

大学生活でつかんだ価値を、これからの競技人生へ-。創価大・嶋津雄大(22)は3月5日の「東京マラソン2023」で、人生初マラソンに挑む。大学2年次に休学期間があったため、1年多く大学生活を過ごした男は、チームを箱根駅伝の常連校へと押し上げた。持病と格闘しながら、結果を残し続けた5年間。箱根路で得たモノを胸に、人生を歩み続ける。

陸上

〈3月5日号砲 東京マラソン直前企画〉

東京マラソンに挑む2人の箱根ランナーの物語!2部作でお送りします

23年箱根駅伝、創価大4区嶋津(左)は小田原中継所で5区野沢にたすきを渡し、最後の箱根を締めくくった

23年箱根駅伝、創価大4区嶋津(左)は小田原中継所で5区野沢にたすきを渡し、最後の箱根を締めくくった

自身4度目の箱根を走り終え

2023年1月2日。自身4度目の箱根駅伝。

時計の針は午後1時を回っていた。往路のフィニッシュエリアの芦ノ湖には、5区のランナーが駆け込もうとする時間だった。

それでも小田原中継所では、たくさんの人が自分を待ってくれていた。その光景こそが、自らの歩みを礼賛してくれているようだった。

嶋津雄大は目に焼き付ける。

18歳の自分は、今の自分を見て、どんな顔をするだろうか。

そんな想像を巡らせていた。

「びっくりするとは思いますが、意外と納得するかもしれないです。驚きながらも『あ、俺はやったんだ』って。5年前の自分は、今の自分を見てそんな反応をするかもしれません」

明るく弾むような声で、そう言った。

創価大を選んだ理由

嶋津は東京都町田市出身。高校は稲城市の若葉総合へ通った。

同校は2005年度に開校した公立校。強豪私学とは、対極の高校だった。

その環境下で結果を示してきた。3年連続で出場した東京都駅伝では、高校2年次から2年連続で区間記録を更新。高校3年次には、青梅マラソンの高校男子10キロの部で優勝も飾った。

陸上界でも、存在を知られるようになってはいたものの、進学先には創価大を選んだ。箱根駅伝には第91回大会(2015年)で初出場したばかりで、嶋津が入学した当時はシード権すら獲得したことがなかったチームだった。

門をたたいたのは、1つの理由があった。

「僕がこの大学に進んだのは『嶋津雄大が来たから、箱根駅伝を走れるようになった』と言わせたいと思ったからです」

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岐阜県不破郡垂井町出身。2022年4月入社。同年夏の高校野球取材では西東京を担当。同年10月からスポーツ部(野球以外の担当)所属。
中学時代は軟式野球部で“ショート”を守ったが、高校では演劇部という異色の経歴。大学時代に結成したカーリングチームでは“セカンド”を務めるも、ドローショットに難がある。