帰ってきた平尾誠二“最後の教え子”「失敗してもええねん」命日を前にかみしめる言葉

「ミスター・ラグビー」と呼ばれた人の教えは、多くの人の心に生きている。平尾誠二に導かれてラグビーを始めた“最後の教え子”は、今年の正月に約束の場所にたどり着き、そしてユニホームを脱いでいた。あの日から10カ月-。10月20日の命日を前に、彼は再び走り始めた。(敬称略)

ラグビー

 

平尾誠二さん(左)にラグビーを教わり、国立競技場を目指してきた(渡辺美香さん提供)

平尾誠二さん(左)にラグビーを教わり、国立競技場を目指してきた(渡辺美香さん提供)

たどりついた約束の国立、その後

新宿からJR中央線に揺られ、40分ほどで八王子に着く。そこからバスに乗り換えて20分ちょっと。

サマーランドの手前で降りると、明治安田生命グリーンランドという名のグラウンドがある。

住所でいうなら東京都八王子市戸吹町。

森に囲まれた敷地には野球場が2面とアメフト場、テニスコートが9面。その中央にラグビー場があった。

今年の1月2日。

初めてたどり着いた約束の場所は、7万人近くを収容する国立競技場だった。

あの試合を最後に1度はユニホームを脱いだ彼が再出発したのは、即席の観客席があるだけの静かな場所だった。

公式記録には観衆は50人とある。

ただ、それよりはもう少し多いように感じたのは、両チームの関係者らが集っていたこともあるかも知れない。

2023年10月1日にあったトップイーストBグループ。

明治安田生命HOLLYS(ホーリーズ)は、リーグワン入りを目指している日立Sun Nexus茨城と対戦した。

朝早い新幹線に乗り、神戸から両親が駆けつけていた。

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編集委員

益子浩一Koichi Mashiko

Ibaraki

茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。