【箱根2025ワセダを追う〈1〉】攻めて沈んだ2区「目立たない早稲田」との決別

箱根駅伝で歴代2位の13回の優勝を誇る早稲田大学競走部。第101回大会では総合4位と上位争いを繰り広げ、11年大会以来の総合優勝へ、名門復活を印象付けました。22年6月に就任したOBの名ランナー花田勝彦監督(53)による、再建の歩みに密着して3季目。今季は「復権前夜」と題した箱根路を描く集中連載で、変革の現在地に迫ります。第1回はエースの山口智規(3年)。その2区の走りに見いだした可能性をひもときました。(敬称略)

陸上

25年箱根駅伝成績


総合大学タイム往路大学タイム復路大学タイム
1青学大10:41:191青学大5:20:011駒大5:20:50
2駒大10:44:072中大5:21:482青学大5:21:18
3国学院大10:50:473早大5:22:303国学院大5:25:21
4早大10:50:574駒大5:23:174帝京大5:25:30
5中大10:52:495創価大5:23:385東京国際大5:26:21
6城西大10:53:096国学院大5:25:266順大5:26:25
7創価大10:53:357城西大5:25:587東洋大5:27:03
8東京国際大10:54:558立大5:27:278城西大5:27:11
9東洋大10:54:569東洋大5:27:539日体大5:28:19
10帝京大10:54:5810日体大5:28:0310早大5:28:27
11順大10:55:0511東京国際大5:28:3411創価大5:29:57
12日体大10:56:2212中央学院大5:28:3712立大5:30:54
13立大10:58:2113順大5:28:4013中大5:31:01
14中央学院大11:00:1314帝京大5:29:2814中央学院大5:31:36
15法大11:03:1615山梨学院大5:31:0315法大5:31:51
OP関東学連11:06:5316法大5:31:2516専大5:32:03
16神大11:07:2817日大5:33:04OP関東学連5:33:48
17専大11:08:53OP関東学連5:33:0517神大5:33:49
18山梨学院大11:09:4018神大5:33:3918大東大5:36:54
19大東大11:10:3819大東大5:33:4419山梨学院大5:38:37
20日大11:11:5020専大5:36:5020日大5:38:46
総合4位でゴールした早大10区菅野。花田監督の前で涙したという

総合4位でゴールした早大10区菅野。花田監督の前で涙したという

花田体制3季目 今年はどんな舞台だったのか

大手町。

1月3日、午後1時30分過ぎ。

えんじ色のジャンパーを着た選手らが、次第に大きくなっていく菅野の姿を見つめていた。

10区間をつないできた幕切れ。その直前で飛び込んできた国学院大の後ろから、顔をしかめて空を見上げるように、ゴールテープを切った。すぐに主将の伊藤が抱きかかえた。

登録された16人のメンバー、そしてサポートをする主務たちが、重なるように集っていく。早稲田にとって、今年の箱根はどんな舞台だったのか。その答えを探すために、菅野を中心にできた輪に揺れる顔を見逃すまいと観察する。

花田体勢を見つめてきて3回目の大手町。3年連続、アンカーを務めたのは菅野だった。

総合6位だった23年はゴールエリアの入場制限があり、全員での出迎えはできなかった。当時のエース井川が1人、顔をしかめる菅野を受け止めた。

総合7位だった24年は「ゴールの瞬間は笑顔で」と誓った仲間の姿に、菅野は無理矢理にほおを緩ませて、指で「W」の文字を作った。

真っ先に受け止めた伊藤と北村は、ともに直前にインフルエンザを発症し、体調が戻りきらずに箱根の出走を断念していた。6位の法政大まで5秒差にも、アクシデントを皆で乗り越えた安堵(あんど)感がみなに広がった。

そして3季目。単純な順位では計れないチームとしての「感情」が現れる瞬間こそがゴールだ。

輪になった集団に、ねぎらいのほほ笑みはある。だが、心底の歓喜はないと感じた。10区間をみなで駆け抜けた充実感も、過度に際立ちはしない。口を真一文字に閉じ、少し眉間に力が入ったような顔が並ぶ。

悔しい表情で引き揚げる早大10区菅野

悔しい表情で引き揚げる早大10区菅野

汗と涙の101回襷を手に宣言「来年は総合優勝」

総合4位。

「復活ののろし」。そんなフレーズが浮かぶ名門の躍進をねぎらう拍手に、一見すれば似つかわしくない硬さにも受け取れる雰囲気が漂った。

直後に近隣のビルの一室で行われた大学の報告会で壇上に立った伊藤は、その理由を明瞭に説明した。

「すごく悔しいです」

すかさず、言葉をかぶせた。

「ただ、胸を張れる4位、胸の張れる悔しさかなと今は思っています」

今季、目標に据えたのは3大駅伝での3位以内。出雲、全日本に続き、届かなかった。

同時に、肩を落とす必要はないとも感じた。その本音を、皆を代弁するように声に乗せた。

納得の悔恨。

その意味を、直前で壇上であいさつした花田自身も言及していた。

「選手たちは誰1人うれしいとは思ってないと思います。非常に悔しい結果でありました」

そして、続けた。

本文残り74% (5226文字/7085文字)

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて17年。25年4月に初の異動で野球部へ配属となりました。競技経験はありませんが、現在は息子が通う少年野球チームで“球拾い”コーチとして奮闘中。記者としても、様々な話題を拾います。ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。クラフトビール好きです。