【春高の舞台裏〈3〉】連覇逃した就実~苦難の連続だった3年間の軌跡と未来へ続く夢
就実高女子バレーボール部を率いる西畑美希監督のLINE(ライン)にメッセージを送ったのは、高校選手権大会(春高バレー)の準決勝で共栄学園(東京第3代表)に敗れた翌日のことだった。連絡はこないかも知れない。疑惑のコロナ陽性で棄権となった2年前、責任を感じて1カ月ほど失踪したのを聞いていたから。予想に反して返事はすぐに届いた。3回連載の最終話。
バレーボール
就実高バレー部連載〈2〉西畑美希監督編
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2年前に失踪した監督~乗り越えた苦難
体育館の下にある教官室の扉を開けると、彼女はそこにいた。
机の上には領収書やノートが広がっている。事務作業をしていたようだ。
エースの福村心優美と高橋凪にインタビューをさせてもらった後、机をはさんで西畑監督と向き合った。
「この3年間はいろいろありましたね」
そう問いかけた。
「あっという間じゃったね。この子たちがいなくなったら、寂しくなるんかなあ。
いろいろあったけど、全部乗り越えてきとるんですよ、この子ら。ずっとメダルを取ってきたんです。金と銀は持っとったし、銅はなかったから、これでコレクションがそろった。すごいことなのに、だんだんマヒしておかしくなる」
2年前の正月にあった高校選手権大会(春高バレー)で“コロナ陽性”とされ、舞台に立つことが許されなかったあの日から。まるでドラマのような物語は始まった。
1年後に全国制覇を達成する。
当時1年だった福村らが最終学年となった昨年はインターハイ準優勝、国体で優勝。
連覇を目指した今年1月の春高は準決勝まで進みながら、前日にエースがアクシデントに見舞われ、あと1歩届かなかった。
どうしても勝たせたい世代だったに違いない。
2年前のように、監督はショックで姿をくらましてはいないだろうか。
心配は杞憂(きゆう)に終わった。
素直に胸の内を伝えると、笑みをこぼしながらこう言った。
「連覇とか2冠とか興味ないから。記者やテレビの人が取材に来て『優勝したいです』って言うまで帰らんから、早く帰ってもらうために言うとるだけなんです。私らはただ、いいバレーがしたいだけ。さんざん連覇とか優勝とか言われたけど、そんなこと思ってバレーしたことなんてない。それより、あんな状態でよく3位になったよ。ベスト8で『大阪国際にやられるかも』って思ってたから。心も体も準備ができていないと日本一にはなれない。それを知れて良かった」
たくさんの思いを聞くことができたインタビューだった。
その根底には深い愛情のようなものがあった。
決して飾ることなく、純粋にバレーボールを極めようとしている。
そんなチームが岡山にある。
連載の最終話は等身大の就実高校バレーボール部、監督の西畑美希を描く。
エース福村は大阪マーヴェラス入り
SVリーグの大阪マーヴェラスは2月12日、就実の福村心優美(3年)が4月1日付で入団することを発表した。背番号は17。
チームのHPには「高い身体能力を生かした得点力はもちろんのこと、難しい状況においてもボールを落とさない気迫あるディフェンスが持ち味の選手」と紹介され「福村選手の加入により、より一層チーム力を強化し、大同生命SV.LEAGUE初代女王の座獲得を目指してまい進して参ります」としている。
大阪マーヴェラスは15節終了時点でリーグ首位につける強豪。日本代表の林琴奈(金蘭会高出身)らが所属している。
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茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。