輪界新時代を告げる機動型が日本選手権競輪(ダービー)の覇王になった。

 2人の兄もS級で活躍する2世選手の三谷竜生(29=奈良)がG1初戴冠を果たした。打鐘で深谷知広が大外をカマすと内を突いて3番手を奪取。直線一気に抜け出して優勝し、初のKEIRINグランプリ(GP)切符を獲得した。奈良支部所属として初のタイトルホルダー誕生。

 G1最高格ダービーの決勝を最速で駆け抜けたのは168センチの小さな機動型だった。大仕事をやってのけるとガッツポーズを繰り返した。「1着という確信があった。勝ちにいかないと勝てない。勝つつもりで戦った」。

 近畿の総帥・村上義弘が欠場したシリーズを、G1決勝三度目の正直でカリスマの意志を継承した。初決勝の昨年3月名古屋ダービーは優勝した村上と、川村晃司の前で駆けた。2度目のG1決勝は今年2月全日本選抜で稲垣裕之の前。いずれも大先輩の京都勢の前で果敢に戦い、散った。

 3度目の決勝は唯一の近畿勢で、桑原大志との急造ラインとなったが「近畿1人でも力を出し切る」を貫いた。打鐘の時点で先頭山田英明の3番手。大外を深谷がカマすと「体が反応した」と、2センターから内を突いて深谷の3番手を奪取。一瞬の判断が大勝負の決め手となって、直線一気に突き抜けた。100期生以降では初のG1覇者が誕生した瞬間だった。

 競輪一家の三男坊に生まれ育った。長男政史(34)と次男将太(31)もS級で活躍中で、将太も今シリーズに参戦した。大学までラグビーで活躍したが競輪転向はごく自然な流れだった。「あまりほめられたことがないが、ちょっとはほめてもらえる」。元選手で師匠の父典正さんに最高の報告ができる。

 優勝賞金6500万円は「奥さんに任せます(笑い)」。夫人と1女3男の父であるダービー覇者が満面の笑みだ。初のGP切符も手中にした輪界新時代の旗手が、近畿から誕生した。【大上悟】

 ◆三谷竜生(みたに・りゅうき)1987年(昭62)9月5日、滋賀県大津市生まれ。関東学院大卒。高校、大学はラグビーに打ち込み、ポジションはCTB。競輪学校101期生として12年7月向日町でデビュー。父は典正(49期=引退)さん、長男政史(93期)次男将太(92期)という競輪一家に育つ。通算405戦135勝。通算獲得賞金1億9076万9211円(7日現在)。168センチ、77キロ。血液型B。