大会が進むに連れて、空気が引き締まってきた。このバンクはカントが強く、直線部分にも傾斜がある。コーナーの出口で自転車が下に落ちるため、立て直しながら走らなければならない。真っすぐ走ることさえ難しい。2予A9Rで3着のベテラン岩津裕介でさえ「やっとバンクに慣れてきた」と言うほど特殊だ。

ヤマコウは伊藤旭の単騎まくり3連発に期待した
ヤマコウは伊藤旭の単騎まくり3連発に期待した

そんな中、連日結果を出しているのが伊藤旭だ。初日、2予と9番手まくりが決まり、連勝で準決に勝ち上がった。展開待ちの形ながら、調子の良さが際立っている。彼はモトクロスバイクをやっていたので混戦の動きに強い。ただ、末足が甘いので走りに注文がつく。そこが葛藤でもある。戦法が定まらず苦しむこともあるが、単騎だと持ち味が生きる。レース後は「車番も悪いし、後ろからレースを見て仕掛けた」と明るい表情を見せていた。

競輪はラインがあるからこそ面白い。だが、ラインがあるからこそ難しい。自分も自転車競技の経験がないままプロになったので、競輪の本質が分からず悩んだ時期がある。今はルールも変わり、競輪と競技の考え方が交わる時代。選手たちも、どちらが正解か迷いながら走っているように感じる。伊藤も「先行もできるようにならなければ…」と、よく口にしていた。もちろん先行を貫き結果を出すことは尊いが、向かない形を続けると、努力の方向を見誤ることになる。自分の持ち味を理解し、どう生かすかが本当の成長だ。

準決11R。今日も単騎だが、足をためて流れを見極められたら、チャンスはある。(日刊スポーツ評論家)