欧州サッカー2022-23シーズンが開幕しました。会場の様子からはコロナ・インパクトをすっかり忘れさせるものとなっているように感じます。

メッシ選手の電撃退団からバルセロナのゴタゴタは終焉を迎えるどころか、更なる火種を感じさせる騒動が続いています。改めてリーガが独自に導入する、サラリーキャップが適切なものなのかという疑問も大きくなっています。リーガだけのことを考えれば当然必要なシステムで、それはリーグ運営という観点からすれば非常に価値を高めるものにつながっていると思います。一方、他リーグのクラブのサラリーは青天井状態のチームが数多く出現しています。特に中東のオイルマネーをバックに構成しているチームは比べ物にならないほどの巨額なサラリーの提示がなされています。

レアル・マドリードは絶対本命とされていたフランスの若きストライカーの獲得に失敗。このケースはお金が全てではないと思いますが、少なからず影響をしたのは確かでしょう。大逆転に大逆転を重ねてヨーロッパチャンピオンを勝ち取ったチームもどこかでその限界が来ることは薄々感じているのかもしれません。

そんなレアル・マドリードから欧州CL3連覇を含む大躍進を支えた中心選手がまた1人移籍しました。ブラジル代表のカゼミロ選手です。ブラジル・サンパウロ出身の選手で2013年にレアル・マドリードに加わりました。1年間カスティージャでプレーの後、ポルトガルのFCポルトへレンタル移籍したものの、その活躍が認められ2016年シーズンからレアル・マドリードに復帰。その後スタメンを勝ち取ると、モドリッチ、クロースと共に中盤を構成し、レアル・マドリードの躍進を支えました。ブラジル代表にも2011年から名を連ね、現在に至ります。そのカゼミロ選手はサンパウロからわずか7億円前後でマドリードに移籍。(実は最初サンパウロからローンでBチームのカスティージャにきていたことは意外と知られていない)。それが10年経って7200万ユーロ、日本円で約100億8000万円という大きな移籍金に姿を変えてしまうところがこの業界の魅力なのかもしれません。

実はこの100億円という取引は、レアル・マドリードの歴代の移籍金ランキングの中でも第3位に入る大きさだということで、1位はクリスティアーノ・ロナウドでユベントスへ移籍した163億8000万円。2位はディマリアで105億円。しかし、利幅で見ると、ロナウドは約126億円で「購入」しているので57億円の利幅。ディマリアは約45億8700万円で買い取っているので約50億円の利幅。カゼミロは7億円前後での買取りでしたので、93億円という利幅に。単純にどのぐらい儲かったのかという視点から見ると、金額はレートなどにもよりますが、それらを加味しても想像を超える非常に大きな価値のある取引であったことがわかります。

そしてレアル・マドリードは他クラブ同様コロナ・インパクトを機に売上が下がっており、コロナ前の最高売上が7億5000万ユーロ(約975億円)に対し、昨シーズンは6億5000万ユーロ(約845億円)の売上とも言われており、ここだけ見ても15%近くも落ちていることになります。この15%は日本円にすると130億円ぐらいになりますから、売上という点から見れば、非常に大きなものになったことになります。

記者会見で5月のシーズン終了時から移籍の話をしていたと話したカゼミロ。実は首脳陣は移籍することを計算して新しい選手を獲得していたのかもしれません。新シーズンにおける若きレアル・マドリードの中盤を支える新トリデンテの活躍が期待されます。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)