ワールドカップ(W杯)カタール大会は、日本の躍進もあり大きな盛り上がりをみせています。その視聴数は世界人口の約半数にもなると言われています。これだけの視聴があるイベントへのスポンサーとなれば、当然多額の費用が必要になります。トップレベルのFIFAパートナーでは、年間契約は1業種1社の縛りがあり、さらにW杯だけでなく、FIFAが主催する全ての試合で広告を出すことが可能。FIFAロゴの使用権が2大会分(8年間)もらえるほか、周辺ビジネスの権利も与えられるといいます。

そのトップカテゴリーで最も長くスポンサードしているのがドイツのスポーツメーカー、アディダス社。1970年から協賛しており、直近の契約は2030年まで。領域はスポーツギア・アパレルカテゴリー。試合公式球やW杯関連グッズの販売をしており、独占ということから行くと、ありとあらゆるグッズの製作をアディダス社が手がけています。このトップスポンサーを独占でキープするのには、ビジネス面だけの経済的な儲けの話だけではありません。競合他社が入ってくることができないので、ナイキ、プーマといった世界的なスポーツブランドはタッチできません。サッカーにおけるブランドイメージの刷り込みにも大きな影響を与えられます。今回VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が入った、三笘選手のスペイン戦のライン側のクロスのシーン。スパイクを契約しているプーマにとって、足元が何度も映されていることは大きなことでした。何度もオレンジ色のスパイクが映されれば、メインスポンサーの1社として独占的に囲っているW杯のアディダスイメージに一石を投じることができます。今後、何十年にも渡り、あの足元のライン側の絵が取り上げられる可能性もあります。

日本企業を見てみると、2014年ブラジル大会を最後にソニーが退いてから、現在は1社もスポンサードしていません。その昔はキヤノン、富士フイルム、セイコー、日本ビクター、富士ゼロックス、NTT、東芝といった日本企業がスポンサードしており、特に後ろ3社は2002年の日韓ワールドカップを機にビジネスチャンスを得た形となりました。2021年に東京オリンピックが開催されたこともあり、FIFAへのスポンサーはゼロとなりました。代わりに中国の企業が増加しており、中国は2050年までにW杯開催を目指すとも宣言している影響もありそうです。

アディダス同様に長期にわたってスポンサードしているのがマクドナルドです。今回現地を訪れて、不思議に思うことがありました。マクドナルドのスポンサーカテゴリーはW杯スポンサーということでFIFAパートナーに次ぐ2番目の階層のスポンサーです。直接関わる権利が与えられるはずなのに、現場では全くその姿が見えませんでした。マクドナルドに足を運んでもW杯らしさは全く見ることができず、会場にはブースもなければ商品販売もありませんでした。開催国での展開というよりは、開催国以外での世界的な展開を狙っていたのかもしれません。はっきりとした答えは分かりませんでした。サッカーにまつわるお金の話なので引き続き、取材してみたいと思います。その効果は一体どうなっているのか改めてスポンサーの狙い・意味合いを考えさせられる件です。

【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)