セレッソ大阪FW大久保嘉人(38)が完全復活した。古巣復帰した今季、開幕からここまで全7試合に先発し、得点ランク3位の5得点と大活躍。磐田、J2東京Vに所属した最近2年は不振を極めたが、前人未到のJ1通算200ゴールへはあと10点に迫る。日刊スポーツ評論家で元日本代表FWの永島昭浩氏(56)が、復活できた2つの要因を解説した。代表期間で中断していたJ1は、2日のC大阪-鳥栖(ヤンマー)で再開される。

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サッカーに年齢は関係ないが、大久保のプレーは38歳には見えない。いや、38歳だからできるのかもしれない。成功する2つの要因を考えてみた。

(1)コミュニケーション能力のスキルが高い 大久保はピッチ内外で相当に同僚と話をしていると聞く。選手はボールを扱う技術の高さは重要だが、レベルが高い舞台ほど共同作業、グループ戦術が必要になる。ピッチに立つ前から「ここにパスがほしい」と主張できているはずだ。

象徴的なのが3月6日東京戦の得点。MF坂元が顔を上げた瞬間、迷わず大久保にクロスを出した。坂元はボールが来る前にFWの位置を確認しており、大久保にすれば、仲間に位置取りを見てもらっている時点で“勝負あり”だ。

FWは仲間に見てもらわないと、点は取れない。大久保も普段から要求していたことが結果につながっている。左利きである坂元のキックの軌道をイメージし、瞬時に動きだして落下点へ到着している。出し手と受け手の理想的な関係だ。

僕も神戸での現役時代、デンマーク代表MFミカエル・ラウドルップといい関係を築けた。2人ともゴールにかかわっていない場所でポジションを要求し合い、角度と距離を保った。要求し合うというコミュ力があって初めて、2人共通のロジック(論理)が蓄積され、その上にアイデアが生まれていく。これがゴールが生まれる過程になる。

(2)「新境地開拓」 大久保といえばドリブルが代名詞だが、若い時は通用しても今は体力的に考えれば無理もある。得点パターンの選択肢の中で、C大阪に来てシンプルなプレーを選んでいる。ゴール前でほぼ1タッチで決めるスタイルを、仲間に理解させている。

現在4位のC大阪は開幕7試合で総得点は13(うち5得点が大久保)。首位川崎Fの19に次ぐ2番目の攻撃力を誇る。これは会社の経営や教育現場でも同様でグループ、組織で高め合っている証明にもなる。チームとして、より成熟していく上で元日本代表の獲得は、いい補強になった。(日刊スポーツ評論家)

▼永島氏と大久保 「ミスター神戸」と呼ばれた永島氏が神戸時代につけていた背番号13は、神戸のエース番号とされ、のちに移籍してきた大久保も着用。また33歳で迎えた97年には、永島氏はキャリアハイの32試合22得点。「体力が落ちていったのに、時間をかけて自分を成長させられた」と経験を武器にした。今季の大久保も似た道を歩む。

◆大久保嘉人(おおくぼ・よしと)1982年(昭57)6月9日、福岡県生まれ。国見から01年C大阪入り。04年マジョルカ、07年C大阪から神戸へ。08年ウォルフスブルク、09年以降は神戸、川崎F、東京、川崎F、磐田、J2東京Vへ。04年アテネオリンピック、10、14年ワールドカップ日本代表。国際Aマッチ通算60試合6得点。170センチ、73キロ。

大久保の年度別成績
大久保の年度別成績