日本は南アフリカを下し、白星スタートを切った。内容的にはボールを保持した日本が圧倒的に上回り、ゴールも時間の問題と思われたが、意外にも苦戦した。元日本代表FWで日刊スポーツ評論家の永島昭浩氏(57)は、最終ラインのビルドアップ(攻撃の組み立て)のまずさが、苦戦を招いた要因だと指摘した。

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内容は悪かったが、よく勝った。メダルを目指す上で本当に大きい1勝だ。

日本が苦戦した一番の理由は、前半の最終ラインからのビルドアップにある。5バックで専守防衛を図る南アフリカの守備陣に対し、左右に揺さぶるようなパスがほとんどなかった。ボディーブローのパンチを打ち込まないと、勝てる試合まで勝てなくなる。

相手の守備が適度な網目(距離感)を保ち、そのエリアに堂安や久保が突っ込んでいったが、余裕を持って対応された。最終ラインに求められたのは、例えば超速のパスでサイドを引っ張り出すとか、1タッチで狙ってあわてさせないと。

しかし供給されるパスは、時に3、4タッチでゆっくりしたもの。これでは相手に考える余裕ができ、体力も温存できた。だから後半も日本の攻撃に耐えられ、あわやドローも覚悟しなければいけない展開だった。もっと相手の網目を広げる工夫がほしかった。

その状況を救った久保の1発は、彼の欧州の最前線で生き残っている魂のようなものを感じた。苦しい時間帯で個人技で奪ったゴールは、まさに起死回生だった。

次のメキシコは間違いなくベスト4には進める強豪国だ。スペイン、ブラジル、アルゼンチンを含め、これらの優勝候補に、日本が渡り合えるか試金石になる一戦だ。メダル獲得の可能性を探るには、格好の相手になる。(日刊スポーツ評論家)