選手がクラブを思う気持ちが、形になりました。ピッチに立ち、公式戦で活躍して勝利に貢献することが選手として最も望ましいですが、それ以外にも一役買うことができる時代です。

 J1清水エスパルスのDF鎌田翔雅(28)が、今季のホームゲーム招待企画として「鎌田翔雅お楽しみシート」を始めました。鎌田は昨季11月26日ホーム、アルビレックス新潟戦(2-3)の接触プレーで右ひざ前十字靱帯(じんたい)を損傷。全治7カ月の見込みと発表されました。16年シーズンの4月には左ひざ前十字靱帯(じんたい)を損傷し、全治6カ月。2年連続で大ケガを負いました。ピッチに立てない時間が長かったからこそ「昨季の終わり頃から、いつかホームゲームで企画ができたらいいなと思っていた」と考えていたそうです。

 「ケガをしたことがきっかけで、個人としてチームのために何ができるかを考えたときに、まだエスパルスのサポーターではない人や、スタジアムに来たことがない人を呼びたいなと思った。今までにない変わったことをして、サッカーの楽しさ、(ホームの)アイスタの楽しさを伝えられたら」

 今シーズンの始動後、クラブに相談し、協力を得て実現にこぎ着けました。開幕戦の鹿島アントラーズ戦(2月25日・0-0)に向けては、募集期間は3日間だけだったにも関わらず、200人近い方から応募があったそうです。内容は試合前のアップを、ピッチサイドで鎌田と一緒に見学することができます。毎回、鎌田自らプレゼントも考えるなど趣向を凝らしていく予定です。

 鹿島戦で初回の企画を終えた感想は「楽しかった!」でした。参加者からは「アップ中はどんなことを考えているんですか?」など質問を受け、自身のコミュニケーション能力も試される場に。「これからは、子どもからお年寄りまで、幅広い年齢層の方と、どんな会話ができるか。これからの自分の力にもなると思う」と振り返りました。大ケガからのリハビリ期間は、プロ選手にとってメンタル面もキツイはずです。その中で、予定していた約15分間をオーバーして参加者と笑顔で話していた鎌田の姿に、強さを見た気がしました。

 現在は、バイクをこぐなど順調にリハビリを行っています。この企画の実施期間は、鎌田が実戦に復帰する見込みの6月までの予定です。

 「エスパルスに興味を持ってもらうきっかけになったらうれしい。サポーター歴が浅かったり、テレビ観戦しかしたことない人に、スタジアムでしか分からないことを伝えたい。魅力のあるスタジアムで、エスパルスのサポーターの熱をたくさんの人に味わってほしい」

 公式戦に復帰した際には、招待企画でスタジアムに足を運んだ人がスタンドにいて声援を送ってくれる-。そんな光景を、見たいです。


 ◆保坂恭子(ほさか・のりこ)1987年(昭62)6月23日、山梨県生まれ。埼玉県育ち。10年入社。サッカーや五輪スポーツ取材を経て、15年5月から静岡支局に異動。今年もJ1清水とJ3藤枝の担当。鎌田とは千葉、湘南時代も担当していて、取材するのは3クラブ目です。