平昌(ピョンチャン)冬季五輪に魅了された1人だ。4年に1回、普段はなじみの薄い競技に熱狂し、知ったかぶってうんちくまでたれる。今回は何より、時差がないことが大きい。日本勢の大活躍を存分に楽しめた大会だった。

 中でもカーリング女子日本代表のLS北見にほれてしまった。見ている側がほっこりする笑顔、明るさはもちろん、驚いたのがコメント力。紙面上やテレビインタビューでしか接点はなかったが、場の空気を読んだ受け答え、言葉の引き出しの多さに感心しっぱなしだった。失礼を承知でいえば、五輪以外ではマスコミに取り上げられることも少ない競技。言葉の力は、どこで鍛え上げられたのだろう。取材する機会があればぜひ聞いてみたい。

 と、平昌まで寄り道したが、今回のテーマにしたかったのがそのコメント力。端的にいえば、選手の声を聞き、印象的な言葉をみなさんに伝えるのが我々の仕事。担当してきた種目、選手それぞれに、心に響くような声を聞いてきた。サッカー選手も、選手の数だけ個性がある。しゃべるのが苦手な選手もいるが、それも個性ととらえれば取材の楽しみになる。

 「コメント力」の視点から、変わってきたと個人的に感じるのがセレッソ大阪のFW杉本健勇(25)。1年前は「やんちゃやな」と思う発言もあったが、今は違う。例えば囲み取材で記者の質問をかみしめるようにとらえ、敬語で丁寧に返す。いつぐらいからか、たどってみたら、日本代表に初選出された昨年8月あたりから変わってきたように思う。

 やはり「日の丸を背負う」というのは、そういうことも含むのだろう。クラブ幹部も「自覚、という点では確かに変わってきた」と話す。杉本は言葉の力を理解している。今回の欧州遠征前、日本代表に選出された際も「口ではなんぼでも大きいこと言える。それをピッチで表せるかが、選手として大事。でかいことを言って結果が出なければたたかれる。あえて自分にプレッシャーをかけるのもある」と話していた。

 気持ちがストレートに伝わる言葉。この声を、意図をしっかり伝えたいなと、あらためて思う。「そだねー」も、びんびんに響いた言葉だが、彼女たちが発したのはこれだけではない。これからもどんな「声」に出会えるのか、楽しみにしたい。

 ◆実藤健一(さねふじ・けんいち)1968年(昭43)3月6日、長崎市生まれ。若貴ブームの相撲、ボクシングでは辰吉、徳山、亀田3兄弟らを担当し、星野阪神でも03年優勝を担当。その後いろいろを経て昨春からスポーツ記者復帰。いきなりC大阪が2冠と自称「もってる男」。