寒風のグラウンドに熱すぎる言葉が響いていた。

「自分たちが信じられなきゃ、俺も信じられない!」「勝ちたいっていう5、6人がいる。相手が7、8人いたら勝てないよ!」

12月中旬、堀越高校サッカー部のグラウンド。カールヘアをなびかせながら、スーツ姿でやってきたのは、元日本代表のラモス瑠偉氏(64)だった。第100回全国高校サッカー選手権の開幕直前。レジェンドは10代の選手たちに、戦う心構えを注入していた。

堀越の先輩OBが東京ヴェルディのスポンサー会社社長だった縁で、佐藤監督はラモス氏と元々知り合い。会う度に熱い言葉をかけられていたという。そこで「やるのは選手たちなので、選手に言ってあげてくださいよ」とお願い。快諾したラモス氏は、東京・八王子までやってきたのだ。

約20分にわたり説いたのは、気持ちを強く持つことの重要性。現役時代、有名な選手と対決する時も必ず「自分自身」を信じたこと。指導者となり連敗が続き世間から批判を受けても、周囲に惑わされずに自分の意思を貫き通したこと。実体験に基づいた金言は、選手たちがチームに必要だと痛感していた部分だった。

ただ、自身の経験だけを話していたわけではない。ラモス氏は、前回大会の準々決勝で堀越が青森山田に0-4で敗れた一戦も事前にチェックしていた。「点を取られるまでは良かったよ!」。レジェンドからのお墨付きは、背中を押してくれただろう。

堀越はこの冬、全国の舞台で2回戦敗退となった。それでもグラウンドで聞いたあの熱い言葉は、これからのサッカー人生、その先の人生でも生きるはずだ。 東京Vジュニアユース出身で、主将を務めた宇田川瑛琉(えいる)は、胸に響いた言葉をたくさん教えてくれた。「自分は自分。他の誰が言おうと、自分がやってることには責任を持ってやる。他は関係ないというのをおっしゃっていた」。グラウンドの傍らで耳を傾けていた私も、金言の数々が身に染みた。【磯綾乃】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)