<高校サッカー:広島皆実3-2鹿児島城西>◇12日◇決勝◇国立

 鹿児島城西(鹿児島)のFW大迫勇也(3年)が、1大会最多記録を更新する通算10得点目をマークして「得点王」に輝きながら、初優勝を逃した。前半20分、広島皆実(広島)DFに囲まれながら左足で貴重な先制点を奪ったが、2-3で逆転負け。J1鹿島入りが内定している「怪物」は、プロの舞台で悔しさを晴らす。

 敗北を決める笛が鳴り響くと、大迫勇は悔しそうに唇をかみしめた。今大会10点目を挙げたことより、後悔だけが胸に残った。表彰式で銀メダルをすぐに首から外すと「優勝しか考えてなかったので。自分の力不足。自分が決めていれば勝てた」と悔しがった。

 4万102人の大観衆を前に「怪物」ぶりを見せた。前半20分にペナルティーエリアにドリブルで突入。DFに囲まれ2度阻まれそうになりながらもボールをキープし、左足で先制点を決めた。過去の平山らを超える1大会10点目のゴール。しかし、「記録は関係ないです」とうつむいた。

 「人生を通じて最高の仲間になる」というイレブンと優勝したかった。10日の準決勝後、広島皆実-鹿島学園戦を観戦。新チームで3戦3敗の広島皆実が勝つと「決勝は皆実か。でも、おれたちが勝つからな!」と檄(げき)を飛ばした。この日もチームの先頭に立ち、MF安田や大迫希が痛めたひざを気にすると、声をかけることも忘れなかった。チームのために戦ったから、結果が欲しかった。

 祖父辰義さん(81)にも優勝を報告したかった。高校総体県予選決勝の鹿児島実戦が行われた昨年5月31日。大迫勇の5得点で6-1で勝ったが、辰義さんは釣り船で海難事故に遭い入院した。いつも大迫勇を気にかける祖父は自宅でリハビリ中。テレビの前で孫の活躍を見守る祖父を、勝って勇気づけたかった。

 この悔しさをプロで晴らすため、親交のある瀬戸俊一トレーナー(32)からはプロ入り後も引き続き体幹強化メニューに加え、筋力強化の指導を受ける予定。プロの心得を学ぶため、将来的にはオフに同トレーナーに師事するプロ野球の井口資仁らと「合同自主トレ」を行う計画もある。

 入団する鹿島は大迫勇に積極的に実戦経験を積ませる意向で、26日の入団会見からチームに合流する予定だ。鈴木満強化部長は「出場のチャンスはある。日本代表に育てなければ」と期待を表した。「苦しい時に点が取れないと意味がない。点の取れるFWになりたい」と話した大迫勇は、日本のエースへ進化すべく新たな戦いに臨む。【菅家大輔】