<アジア大会・サッカー:日本3-0ベトナム>◇女子準決勝◇29日◇韓国・仁川サッカー競技場

 ノリさんに贈る7大会連続のメダル確定だ。なでしこジャパン(FIFAランク3位)がベトナム(同34位)に勝って決勝進出。史上初となる就任後100試合目の指揮となった佐々木則夫監督(56)の節目を飾った。通算は65勝15分け20敗。守備陣は歴代1位タイとなる7試合連続完封を達成した。連覇がかかる10月1日の決勝は、3大会連続で北朝鮮と対戦する。

 佐々木監督が、前人未到の100戦目を白星で飾った。節目で先制V弾を決めたのは、娘のようにかわいがるMF阪口夢穂(26=日テレ)だった。前半24分、クロスを処理しようとした相手GKの手からボールがこぼれ、目の前に転がる。鼻を利かせてボランチからゴール前に上がっていた背番号6は、右足でゴール左上に蹴り込んだ。今大会のチーム得点王となる5点目。視線の先には、うなずく佐々木監督がいた。

 歴史の始まりは08年2月18日、東アジア杯の北朝鮮戦だった。3-2で勝った試合で得点したMF宮間が今は主将としてチームを引っ張る。出場していた阪口は約6年半後に得点で成長を示し「アメとムチがはっきりしてる人。昔はよく練習中に怒鳴られたし、やさしい時はホントお父さんみたい」と話す、なでしこのパパへ決勝切符を贈った。

 佐々木監督の自宅には1畳の畳がある。わざわざ洋間に敷き、その上に座って対戦国の分析や選手の指導法を考えるのが日課だ。日本人らしく、畳の香りと感触にリラックスしながら。映像もそこで見て、編み出す戦術が、11年のW杯優勝を含む通算65勝15分け20敗という高い勝率を生んだ。

 もう1つの記録も打ち立てた。5月の女子アジア杯(ベトナム)から続く無失点試合を「7」に伸ばして、02~03年に達成された最長記録に並んだ。「伸び盛りの選手が経験を積みながら失点ゼロでいけるのは、いいこと」。攻守に充実した状態で、節目に花を添えた。

 それでも通過点だ。100戦を祝福されても「まだまだですね。決勝で最高のパフォーマンスをして、金メダルを取って、日本に帰る。それが僕の中では節目になるのかな」と満足しなかった。新たな歴史が始まる101試合目は決勝戦。初の連覇を遂げた時、安堵(あんど)の喜びに浸る。【木下淳】

 ▼なでしこジャパンの連続試合無失点記録

 5月25日のアジア杯決勝オーストラリア戦から国際Aマッチ7試合連続無失点。上田栄治監督時代の02年10月11日のアジア大会台湾戦~03年6月15日のアジア選手権台湾戦でマークした7試合連続の最長記録に並んだ。