東京五輪世代のU-21(21歳以下)日本代表はアジア大会決勝で韓国に敗れた。A代表の主力をオーバーエージに起用したU-23韓国代表を相手に、終始苦戦を強いられたが、チーム一丸となって体を張るDF力で前後半を通じて韓国を無得点に抑えた。2学年上のチームが多い今大会で、森保一監督(50)が掲げる4強のノルマをクリアし、強豪韓国相手にも互角の戦いを見せた。だが互いに無得点で迎えた延長前半3分、途中出場のFW李承佑のゴールで均衡を破られた。8分後、決定的な2点目をFW黄喜燦に奪われた。それでもあきらめない。延長後半10分、CKからFW上田綺世が頭で押し込んだ。だが反撃は届かなかった。

前半は20分過ぎまで韓国の猛攻にさらされた。7分にはDF2人に対し韓国攻撃陣が4人という決定的な場面を作られた。幸運にも失点を免れたものの、劣勢は誰の目にも明らかだった。球際の強さ、連携、個人技、どれをとっても韓国が上回り、日本代表はクリアするのが精一杯の時間帯が続いた。

ようやく28分にMF三好康児(21=札幌)がボックス内の右サイド深くに侵入し、思い切りよくシュートを放つもGK趙賢祐に防がれた。試合は韓国が圧倒的にボールを支配する中で両チーム無得点で前半を終えた。

ただし、劣勢の中でもメンタルでは粘り強く戦った。韓国A代表の主力であるFW孫興民(26=トットナム)らに対しても物怖じせずに立ち向かった。DF板倉は試合前から「ああいう選手も(今後は)止めていかなければならない。個人的にも1対1になったら負けたくない」と話した。

チームが集合した際のミーティング。指揮官は、コーチとして帯同した6月のW杯ロシア大会で見たものを選手に語った。低かった下馬評を覆し、コロンビアを破って16強に進んだサムライブルー。森保監督の脳裏に色濃く残ったのは、世界のビッグネームに対してまったく気後れしないDF長友らの姿だった。「相手に関係なく、100%の力を発揮すること」。試合に向かう前に必ず口にするこの言葉の大切さをロシアで再確認し、若い戦士たちに最初に伝えていた。

GKオビ(20=流通経大)は「いま自分がA代表の舞台でできるかと思うと難しいけど、そういう話を聞けて刺激になる」と選手の思いを代弁した。現時点では、FW孫興民との実力差があるのは承知の上。ただ、兼任監督が目の前にいることで、五輪の先にあるA代表を意識してレベルアップしようとする意識が選手にはっきりと芽生えた。50年ぶりの東京五輪という大舞台に向けて進みながらも、目指す到達点はあくまでA代表。指揮官の思いは、しっかりと選手に伝わった。

ブレーキを踏むたび座席シートが前方へ抜けるように傾くバスに揺られながら、練習場に向かう道は渋滞が日常茶飯事。選手が「芝の状態が1番いい」と話した練習場のトイレには紙も用意されていなかった。コンディションを崩す選手も出た約3週間を戦い抜いた。19日間で7試合を戦い、日本代表は真剣勝負の中で貴重な経験を積んだ。