ACミランの日本代表FW本田圭佑(28)が、1月の全国高校選手権で初優勝した母校・星稜(石川)サッカー部に、サプライズの優勝記念品を贈っていたことが6日、分かった。記念品は何と推薦本5冊。3月の卒業式に全部員に1人5冊ワンセットで本田圭佑名義で届いた。本田自身が読み感銘を受けたとみられる経営学や語学の入門書などバラエティーに富んだリスト。本田らしさ満載のチョイスで祝福した。

 本田が母校・星稜の優勝を本で祝っていた。これまでに読んだ中から、後輩に勧めるという視点で選んだとみられる。そんな5冊ワンセットの異例の贈り物。よくあるサッカー用具や食品、飲料ではなく、本というのが、いかにもわが道を行く本田らしい選択。ミラノから手配し3月2日の卒業式にサプライズプレゼントとして石川・金沢市の同校に贈られてきたという。

 同校関係者によると受取人に指定されていたのは卒業生に加え、後輩に当たる同校サッカー部の1、2年生を含む全部員。3年生を中心にしたメンバーだけではなく、部員全員で勝ち取った優勝だという意味なのか。5冊で計7832円(税込み)。全部員121人分で、しめて94万7672円になる計算だ。

 東日本大震災直後には日本赤十字を通じ個人的に5000万円を寄付している。金額の多い少ないは関係ない。お祝いの言葉とともに届けられた5冊のタイトル、それこそが何よりのメッセージだった。

 20世紀の物理学者アインシュタインの言葉を紹介する「アインシュタイン150の言葉」から、京セラ創業者で日本航空を再建した経営者の稲盛和夫氏の「成功への情熱」、さらに経営学者ドラッカー氏の著作と、英語の語学入門書。長くマンチェスターUを率いた名将ファーガソン氏の自伝はあったがサッカー関連本はこの1冊だけ。天才の言葉に発想を得て、日本の経営の神様と呼ばれる大人物の人間に対する考えに触れ、世界的経営学者の論理も学べ、もちろん英語も必要だ、サッカーも忘れるな-。そんな思いを込めたのか。ドラッカー氏の1冊は、高校生にはかなりハイレベル。難解でもあるが、あえてこのチョイスとしたようだ。

 この日は日本全国で入学式が行われた。星稜のVメンバー、卒業生も各地で新たなスタートを切った。悩んだ時、迷った時、この5冊が道しるべとなる時も来るだろう。読書家の本田もここ数年、本から厳しい競争社会で生き抜くヒント、何より世のため人のためにどう生きるかを学び実践している。この5冊には、特に多くの“教え”が詰まっているからこその選択とみられる。

 1月の母校優勝時、アジア杯の開催地オーストラリアで大喜びした。「明るいニュースを届けてくれた。星稜に関わる全員が長年、優勝したいと願っていましたから」と。言葉だけでなく、日本のエースは独自のスタイルで後輩を祝福していた。

<本田が贈った本5冊>

 「アインシュタイン150の言葉」ジェリー・メイヤー&ジョン・P・ホームズ編(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 「マネジメント エッセンシャル版-基本と原則」P・F・ドラッカー著(ダイヤモンド社)

 「アレックス・ファーガソン自伝」アレックス・ファーガソン著(日本文芸社)

 「成功への情熱」稲盛和夫著(PHP文庫)

 「キクタン英会話 初級編」一杉武史著(アルク)

 ◆スポーツ選手のプレゼント J2横浜FCのFW三浦知良は今年、全国高校選手権で8強入りした出身校の静岡学園に「優勝したらグアムにV旅行に招待」と夢プランを提示。実現しなかったが話題を呼んだ。横浜MF中村俊輔が母校・桐光学園(神奈川)へボールをプレゼントするなど用具を寄付する選手は多い。野球界でもマーリンズのイチローが母校の愛工大名電(愛知)が甲子園へ出場するたびにボールや用具を贈っている。新庄剛志氏は05年に母校の西日本短大付高(福岡)に推定700万円のマイクロバス1台を贈った。星稜高野球部の山下名誉監督はヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏に毎年、書籍をプレゼントしていた。