日本代表MF井手口陽介(21=ガンバ大阪)が北朝鮮戦で値千金の決勝ゴールを決めた。ドロー寸前の後半48分、G大阪で同僚のMF今野が頭で落としたボールを右足でたたき込んだ。今大会は国内組だけの急造チームだが、井手口は9試合連続出場の主力級。国際Aマッチ2得点目でW杯(ワールドカップ)ロシア大会のメンバー入りへと加速した。

 完璧な連係だった。後半48分の速攻で井手口は前線へ駆け上がった。左の川又がクロスを送り、遠いサイドにいた今野から絶好のパスが来た。「ふかさないように」。狙い澄ました右足のミドルシュートがゴール右に突き刺さった。W杯出場を決定づけた8月オーストラリア戦以来の2点目が決勝点となった。

 思い切って決断した。ドロー目前の後半ロスタイム、守備的MFの2人が逆襲のリスクを背負って前線まで上がった。1人が上がれば1人が守るのが鉄則だが、井手口は「最後やったし上がった。結果的に良かった」。今野は「北朝鮮相手に勝たないといけない意地が出た」。G大阪で築いた信頼関係があるから、勝利につながる判断ができた。お膳立てした先輩は「陽介しか見ていなかった」と照れ笑いした。

 井手口は国際Aマッチ初出場から9試合連続出場。経験は浅いが、今回は国内組でもMF山口ら先発クラスが負傷で招集されておらず、21歳への期待度は大きい。ハリルホジッチ監督も「最後にゴールを挙げてくれたけど、まだ疲労があるように感じた」と高い要求をした。本人も「最初から力を出せていれば楽になったんじゃないか」とプレーに納得はしなかった。

 W杯ブラジル大会前年の13年大会(当時東アジア杯)でFW柿谷や山口らが初優勝に貢献し、本大会の代表メンバーに入るきっかけとなった登竜門。今年代表デビューしたばかりの井手口は「チームとして優勝できたら全員のいいアピールになると思う」とロシア行きを見据える。W杯開幕まであと半年。成長株はまだまだ上昇し続ける。【小杉舞】

 ◆8月31日オーストラリア戦の井手口の得点VTR 1-0の後半37分、左サイドで1人をかわし、中央までドリブルで進み、右足でシュート。DF2人の間を割って18メートル先のゴール右上に突き刺した。このダメ押しゴールで日本は2-0で勝利し、6大会連続W杯出場を決めた。21歳8日での国際Aマッチ初得点で、W杯最終予選では史上2番目の年少、W杯出場決定試合では史上最年少となった。