「令和」で迎える最初のオリンピック(五輪)に、ベストメンバーで挑む。

日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長(61)が改元のタイミングで日刊スポーツのインタビューに応じ、来年の東京オリンピック(五輪)で年齢制限外のオーバーエージ(OA)枠以外、23歳以下の海外組を招集するための交渉が順調であるとした。22年ワールドカップ(W杯)カタール大会で初の8強入りへ、自国開催の五輪で令和の象徴となるようなスター誕生とメダル獲得が最重要だと力説した。【取材・構成=浜本卓也、盧載鎭】

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ソファに座っていた田嶋会長が、身を乗り出した。東京五輪にベストメンバーで臨めば、令和の幕開けを象徴する新スターが生まれるのでは-。そんな問いに「メダルを狙いにいかないといけないし、ベストメンバーにしたい」と膝頭をポンとたたいた。海外組を招集するための交渉がカギを握る(※)。

「OA以外は、海外のクラブからも招集できるようお願いしていく。実際動いている。23歳以下に関しては、非常に前向きに進んでいると思う。必要であれば自分も(交渉に)行くつもりでいます、海外のクラブに。それぐらいの気持ちでいます」との強い決意を示した。

平成ではJリーグが誕生し、W杯は98年フランス大会の初出場から6大会連続出場中と日本サッカーは大躍進を遂げた。そして、新たな時代へ。「W杯ロシア大会(18年)で頑張ってくれた選手が何人も(代表を)退く中で、東京五輪は世代交代する千載一遇のチャンス。隙間を空けずに22年につなげていく。勝たなきゃダメだ、五輪」。東京五輪を、前時代の成長曲線をさらに上昇させるほどの新星を生む絶好機と位置づけている。

継続的にスターが誕生しやすい環境作りにも力を注ぐ。全国各地に眠る才能を発掘して開花させるため、47都道府県に専任の技術担当者を1人ずつ常駐させる計画を進行中だ。「ただ南米選手権や五輪で勝てば(発展が)スムーズにいくというわけじゃない。同時に、いろんな投資をしていくことで子どもたちが憧れるスターが出てくればついてくる」と力を込めた。

田嶋会長は4月のアジア・サッカー連盟(AFC)の役員選挙で再選され、FIFA理事の要職も務める。日本協会会長として2期目を迎え、サッカー界だけでなくスポーツ界の発展にも熱い視線を向ける。「五輪の成功は日本だけでなく、世界のサッカー界、スポーツ界にとっても重要。(16年)リオ五輪の決勝で(ブラジル代表)ネイマールがFKを決めて優勝した。サッカー界がどれだけ五輪に興味を持ち、盛り上がったか。そういうことを考えると、東京五輪では男女ともメダルの位置に行ってもらえるよう、僕らはサポートする。そのためには労を惜しむつもりはない」。東京五輪を令和の象徴となるスターが生まれる舞台にすべく、全身全霊を注ぐ覚悟でいる。

※=W杯やアジア杯、FIFAが定めた国際Aマッチ期間の試合には、各国協会・連盟に選手の招集について拘束力が発生する。だが五輪には同様の拘束力はない。16年リオデジャネイロ五輪では、手倉森監督がスイス1部ヤングボーイズFW久保裕也(現ニュルンベルク)の招集を熱望したが、クラブから拒否され、エース招集はかなわなかった。今回は自国開催の五輪となる。リオ五輪では開催国のブラジル連盟がバルセロナと交渉しFWネイマール(現パリサンジェルマン)のOA枠での招集に成功し、金メダル獲得につなげた例もある。

◆田嶋幸三(たしま・こうぞう)1957年(昭32)11月21日、熊本生まれ。浦和南-筑波大-古河電工で活躍し日本代表では国際Aマッチ7試合1得点。引退後はドイツのケルン体育大に留学しコーチ資格を取得。U-17日本代表監督、日本協会の技術委員長、専務理事、副会長などを歴任。11年からAFC理事、15年に日本人4人目のFIFA理事になった。16年3月に日本協会の第14代会長に就任し、現在2期4年目。