元日本代表MF藤田俊哉氏(50)がワールドカップ(W杯)カタール大会に向け日本代表や出場チーム、世界のサッカーについて語る。日刊スポーツでの代表チェックは約8年ぶり。この間、日本サッカー協会で技術委員会の強化部会員として欧州を拠点に活動。森保ジャパンのスタッフとしても3年間、チームを支えた。今回はまず、知り尽くす、日本代表を分析。W杯1次リーグの戦い方をイメージ。6月の4試合で結果が出なかった攻撃陣のてこ入れ策としてセンターFWにMF堂安律(23)の起用などを提案した。

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1次リーグ初戦のドイツ戦とコスタリカとの2戦目以降を見すえ、さまざまなプランを考えておいた方がいい。初戦は何としても勝ち点がほしいので、堅く試合に入るだろう。したがって、これまで同様システムは4-3-3が妥当。ただ、中盤の構成は変えたい。

GKはシュミット、DFは左から伊藤、吉田、冨安、酒井。4人とも身長185センチクラスで、スピードもある。フィジカル面でもドイツとほぼ対等に勝負できるはず。中盤の3人は現在の逆三角形から三角形に。遠藤を軸に田中、守田のダブルボランチが現時点では妥当。本来センターバックの板倉のポジションを1つ上げ、中盤で起用して守備を強化するのもオプションになる。

トップ下を置き、ここに南野(鎌田と久保も候補)。前線は右に伊東、左は三笘。最前線には堂安を推薦したい。大迫に続くストライカーの台頭を望んでいたが、残念ながら6月の4試合では収穫がなかった。堂安の起用による、新たな化学反応を期待している。体も強くボールキープができるので、攻撃時に時間(ため)も作れる。簡単にボールを失わない上、突破力もありシュート技術も高い。

アジアでの予選で大きな武器となったサイド突破からの崩し、クロスを中心に攻める際は、浅野や古橋、前田も効果的だがドイツが相手となれば、これまでのように何本もクロスは入らないだろう。そんなポイントからも、堂安は面白い存在となる。

6月の4試合では、それぞれのポジションで非常に前向きな発見もあった。3週間近い合宿期間があった。練習からより繊細な部分での戦力分析ができたはず。選手選考の観点からも、ポジティブな時間だった。

チュニジア戦でミスも出たが、日本代表は安定した守備力がベース。加えて中盤にタレントが豊富なことも魅力。今回も良い選手がそろっている。W杯はそれぞれの国が自分たちのサッカーを磨いて世界中の人に見てもらうもの。いわゆる世界最高レベルの品評会である。

初戦が重要であることは言うまでもない。その結果にもよるが、2戦目以降ではより勝利、勝ち点が必要になる。そんな状況となれば、より攻撃的な中盤を編成し、思い切り勝負する戦い、そんな起用も楽しみにしている。

DFラインには大きな変化は必要ないが、今回負傷離脱し1度も起用できなかった菅原を右サイドで起用するプランも良い。オランダで1年間安定して結果を残しているし、攻撃力もあって右なら複数のポジションをこなせる。もともと攻撃力のある左の伊藤が守備力を高めレベルアップしたように、両サイドバックが攻撃の起点となれたら、攻め手が一気に増す。

6月の4試合でシュート0本に終わった南野は、ペナルティーエリア内で力を発揮する選手だから、中央での起用が効果的。攻撃にアクセントがつけられ、得点が狙えて、パスも出せる鎌田、スマートにプレーできる久保をどう配置するのか-。最前線に堂安を推したが、南野や鎌田にする「ゼロトップ」も興味深い。豊富なタレントを勝負強く、闘うグループに作り上げることが、森保監督の仕事になる。

東京オリンピックもそうだったが、今回も吉田と遠藤は最後の試合で疲れがみえ、結果に影響した。W杯で8強を目指すなら、どこかのタイミングでこの2人を休ませないといけない。その意味でも板倉は貴重な存在だし、伊藤の浮上で刺激を受けたはずの中山の踏ん張りにも注目している。

気になったのが、セットプレーで得点できなかったこと。4試合でCKをたくさん得たけれど、得点には至らなかった。僅差の試合を制するためにも強化が必要。セットプレーの成否は、9割以上がキッカーによる。工夫とトレーニングで克服したい。堂安、久保、伊東、鎌田ら正確なキックを蹴ることができる選手はいるわけだから、本大会までに多くの時間を割いてほしい。

W杯カタール大会は26人エントリーの5人交代になる見込み。これは日本には追い風。個性的な選手が多いだけに、いろんなユニットを試して成熟させれば、相手はやりづらくなる。森保監督を応援している。(元日本代表MF)

◆藤田俊哉(ふじた・としや)1971年(昭46)10月4日、静岡市生まれ。清水商高、筑波大を経て94年に磐田入り。01年JリーグMVP。ユトレヒト、名古屋、熊本、千葉でプレーし12年引退。18年からJFA欧州駐在強化部会員。国際Aマッチ通算24試合3得点。