なでしこジャパン(FIFAランキング11位)が1-2でスウェーデン(同3位)に競り負け、2大会ぶりの4強進出はならなかった。今大会5ゴールで得点ランキング首位のMF宮沢ひなた(23=マイナビ仙台)の海外移籍が、11日までに決定的になった。イングランド女子スーパーリーグのリバプールやブンデスリーガのフランクフルトなど複数クラブからオファーが届いており、24年パリ五輪を目指してステップアップを実現させる。

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快足と高い決定力で輝いた宮沢の海外移籍が決定的となった。関係者によると宮沢自身が憧れだと語るイングランド女子スーパーリーグからはリバプール、またブンデスリーガのフランクフルトをはじめ、米女子プロリーグNWSLからもオファーが届いている。今月下旬のWEリーグ杯を皮切りに開幕する国内リーグには出場しない。

なでしこの挑戦は終わった。東京五輪準々決勝でも敗れたスウェーデンに、リベンジはならなかった。宮沢は先発も、ゴールは奪えずに後半35分に途中交代。今大会すでに5得点で11年ドイツ大会優勝時の澤穂希に並ぶ日本人の1大会最多得点となっていたが、期待されていた記録更新はならなかった。快進撃のけん引役は「結果として点が取れていただけ。きっ抗した試合で流れを変えられるようになりたい」と悔しさをにじませた。

初めての大舞台で目覚めたアタッカーは、それまでどこか控えめだった。「力を出し切っていない」。マイナビ仙台で指導した松田岳夫氏(現日テレ東京V監督)の第一印象だ。宮沢は21年にプロのWEリーグが創設されるのに合わせ、日テレ東京Vから加入。スピードも技術も国内では抜群だったが、周囲に気を使い過ぎているように見えたという。献身性が強い半面、ゴールへの執着心が足りず、他の選手への要求も少なかった。松田氏は主戦場をサイドから中央に移した上で「もっと欲を持て」と指摘した。

6月に終わった昨季のWEリーグでは20試合1得点、代表での実績はW杯開幕前の時点で23試合4得点だった。それがW杯で殻を破った。

チームは12日に帰国する予定。わずかなオフをはさみ、ふたたび海を渡る。かねてから志向していた海外移籍が、今大会で悔しさを味わった23歳をさらに成長させることは間違いない。来年7月に開幕するパリ五輪でさらなる高みへ到達するため、宮沢が新しい挑戦をスタートさせる。

◆宮沢ひなた 1999年(平11)11月28日、神奈川県南足柄市生まれ。ポジションはMF。3歳で向田サッカークラブで競技を始める。中学時はOSAレイアFCに所属し、星槎(せいさ)国際高に進学。18年、法大入学と並行して日テレ東京Vに加入。21年にマイナビ仙台に完全移籍。各世代別の日本代表に招集。A代表は18年11月11日の国際親善試合ノルウェー戦でデビュー。22年1月30日の女子アジア杯タイ戦で初ゴール。国際Aマッチ26試合、8得点。160センチ、48キロ。50メートル走6秒8の快足が武器。