女子サッカー日本代表のなでしこジャパン全員にお守りを贈った和歌山・熊野三山の4寺社が、台風12号で被災しながらも踏ん張っている。熊野速玉大社(新宮市)は、一部浸水もあったが周辺住民約20人が避難。熊野那智大社(那智勝浦町)は、崩れた土砂をかぶったものの、堅固な本殿はビクともしなかった。今日8日、ロンドン五輪出場をかけて北朝鮮と戦うなでしこ戦士にも熊野三山のパワーが伝わりそうだ。

 台風12号のもたらした集中豪雨の影響で、熊野速玉大社には、氾濫する熊野川沿いに住む市民約20人が避難した。新宮市の担当者は「速玉大社は一部浸水したようですが、甚大な被害があったとの報告は聞いておりません。集まった市民のみなさんは社内の建物2階で落ち着いているようです」と話した。中国でロンドン五輪に向けて奮闘するなでしこジャパンのメンバー全員が同大社のお守りを大事に持っている。

 熊野速玉大社だけではなく、熊野本宮大社(田辺市)、熊野那智大社、青岸渡寺(那智勝浦町)の4寺社のお守りが、なでしこメンバーに贈呈された。“日本サッカーの神さま”とも称される「八咫烏(やたがらす)」をそれぞれまつっているからだ。

 台風12号の爪痕は新宮市に隣接した那智勝浦町にも広がった。並んで建つ熊野那智大社と青岸渡寺は裏山が崩れて本殿などが崩れた土砂で壁面が約2メートル埋まってしまった。

 同町観光産業課の滝本雄之課長は5日に同大社の朝日芳英宮司(78)と話したという。「道路も寸断され、車も使えないので3時間かけて宮司は歩いて現状報告してくれた」。本殿に押し寄せた土砂の中には大きな岩もあり「人力ではとても無理。応援がほしい」と訴えられたが「それでも本殿の柱1本、ビクともしない」との説明を受けた。「それで最後は宮司、『これも神さまに守っていただいた』と話して、また4時間かけて徒歩で帰られた。とても元気でした。だから、なでしこのみなさんも大丈夫。北朝鮮に勝利してもらえば市民も明るくなる」と滝本課長は笑顔を見せた。

 お守りは気に入られているようで、現在絶好調のFW川澄奈穂美もブログで紹介するほど。熊野三山のお守りパワーの後押しもあれば北朝鮮も撃破できそうだ!

 ◆八咫烏とサッカー

 熊野三山では、熊野権現の使いとして3本の足を持つ黒い鳥、八咫烏をあがめていた。日本サッカー協会のシンボルに八咫烏が採用されたのは「日本サッカーの始祖」といわれた中村覚之助氏が和歌山県那智町(現那智勝浦町)の出身だったことが関連しているといわれる。後輩でシンボルの発案者といわれる内野台嶺(たいれい)氏が、中村氏に敬意を表して採用した説が有力。