<アジアCL:鹿島3-0水原(韓国)>◇5日◇1次リーグ◇G組◇カシマ

 鹿島が難敵水原(韓国)を3-0で下して勝ち点を12に伸ばし、決勝トーナメント進出を決めた。故障のDF岩政大樹(27)に代わって出場したベテランDF大岩剛(36)が、前半27分にヘッドで先制点を奪取。チームを勢いに乗せると、FWマルキーニョス(33)が2点を加えての快勝だった。この日の夜、3位上海申花(中国)が引き分けたため、19日の上海戦を待たずにG組2位以内が確定。首位突破もほぼ手中にした。

 満面の笑み、そして会心のガッツポーズを決める半袖の36歳を中心に、歓喜の輪がつくられた。前半27分、MF野沢の右クロスに合わせて走り込んだ大岩が、鮮やかなヘッドで先制点を突き刺した。「半分はタク(野沢)のゴール。自分としては得点より無失点の方がうれしい」。余裕ある大人びた口調で振り返った。

 岩政の欠場が決まったのは、この日の午前中。「お願いします」という岩政からの電話に「嫌だよ」と冗談で応じた。正式に先発を知ったのは試合直前のミーティングで、平然として受け止め、07年5月9日名古屋戦以来となる727日ぶりの公式戦ゴールだけでなく、鋭い読みで危機を防いで完封劇を呼んだ。

 王者鹿島の強さの「土台」と言える存在だ。今季の契約延長した際は「仕事する場所を与えてくれたクラブに感謝したい」とつぶやいた。控え暮らしが続いても「いつ出番が来ても大丈夫なように当たり前の準備をする。監督に僕が求められているのは、そういうところ」と言い切れる。

 練習は常に全力投球、ライバルとなる若手DFへの助言を惜しまず、クラブへの貢献を最優先する姿はまさに「プロの見本」。オリベイラ監督もこの日の会見で「選手、人間として大岩と一緒に仕事できることは名誉だと感じている」と最大限の敬意を言葉にした。

 実は前日4日の「極秘練習未遂」の際の青空ミーティングが先制点を生んだ。DF伊野波が「あの時に『相手は大きいからCKはショートコーナーとかでタイミングをずらせ』と監督に言われた」と話し、DF内田も「監督の指示がずばり的中した」と振り返るように、先制点の起点はショートコーナー。同監督の意図を具現化した。

 この日の結果で決勝トーナメント進出が決まり、G組首位突破も目前だ。それでも大岩は「次がアウェーだろうと僕たちは勝つだけ」と冷静に話す。この偉大なベテランの存在が、念願のアジア制覇へ向けたチームの支えとなる。【菅家大輔】